日本農村医学会雑誌
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症例報告
脳出血後の療養中に発症し診療中のMeige症候群の男性例
寺内 昭子黒岩 靖泉 從道藤井 忠重
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2015 年 64 巻 4 号 p. 705-710

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抄録

 Meige症候群は1)眼輪筋や口周囲の筋および頭頚部筋の緊張のため, 目をとじ, しかめた表情を呈し, 加えて頭頚部を後屈するジストニーの一つである。抗精神病薬に誘発されることが多く, ひとたび発症すると治療には長期間を要し完治は困難である2,3)。最近, われわれは同症状と診断したが治療効果が得られないまま入院生活を続けている80歳男性例を経験しその経過について報告する。男性は73歳で左視床の脳出血を発症し除圧など保存的な治療後当院に療養入院し7年経過している。76歳ごろより, 動作緩慢や筋強剛, 上肢の振戦がみられるようになりパーキンソン症候群として抗パーキンソン薬や抗精神病薬で治療開始した。3年を経過した頃より, 頭を後屈し, 眼を強く閉じ, 口角は横にひかれ, 口を閉じにくくなりしかめ顔のような表情が持続するようになった。状態が固定するためMeige症候群と診断して薬を調整した。抗パーキンソン薬の減量, 筋弛緩薬の投与, 頚部および眼輪筋へのA型ボツリヌス毒素の注射治療を行なった。緊張による呼吸困難が軽減したがジストニー症状は続いている。同症候群は抗精神病薬により発症することもあるとされるが内服している全員に症状が出るわけではなく, 個人の特質が関係すると考えられる。治療に関しては教科書的に明らかにされたものはないが, 薬4,5), 淡蒼球刺激6), A型ボツリヌス毒素の注射7), リドカイン静注8), 眼輪筋切除の手術9)の報告がある。また, 抗精神病薬を服用する時には早期から眼に現れる合併症に注意することも発症予防の一助と述べられており10)文献による考察を合せて報告する。

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© 2015 一般社団法人 日本農村医学会
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