日本農村医学会雑誌
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原著
造血幹細胞移植患者に対する周術期口腔機能管理
口腔ケアプログラムの標準化に向けて
安井 昭夫北島 正一朗丸尾 尚伸武井 新吾大脇 尚子鈴村 優茉水谷 晴美澤木 絵美溝口 真里子加藤 佑奈小川 ひかる河野 彰夫大井 恵中根 一匡山崎 早百合安藤 哲哉
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2016 年 65 巻 4 号 p. 766-779

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抄録

 造血幹細胞移植は,患者の最大耐容量を超える大量の抗癌剤投与や全身放射線照射(total body irradiation ; TBI)を行ない,患者の骨髄とともに悪性腫瘍の殺滅を達成した後に造血幹細胞を輸注することで,失われた造血能を補う治療法である。放射線,抗癌剤および免疫抑制剤を用いるため,口腔の有害事象として,粘膜炎,出血,易感染性,さらには移植片対宿主病(graft versus host disease ; GVHD)が問題となる。我々は造血幹細胞移植を行なう患者に対して,血液・腫瘍内科と歯科口腔外科が連携して周術期口腔機能管理を実施しているので報告する。対象は2008年から2015年までに自家移植52例,同種移植139例,合計191例の造血幹細胞移植患者である。移植前処置開始までにセルフケアによるブラッシング,含嗽,保湿などの口腔ケア指導に加え,専門的口腔ケアとして歯科衛生士による歯面清掃,機械的歯面清掃および3DS(dental drug delivery system)を完了させる。周術期口腔機能管理によって,咽頭粘膜の細菌検査ではカンジダ菌の頻度が19.3%から4.3%に減少した。造血幹細胞移植に伴う口腔有害事象に対して,移植前処置までに支持療法として口腔ケアプログラムの標準化を立案することは,患者のQOL向上に効果的であると考えられた。

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© 2016 一般社団法人 日本農村医学会
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