日本農村医学会雑誌
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研究報告
骨盤底臓器脱に伴う水腎症の頻度と手術経過
平林 直樹西澤 理矢花 由佳若田 真実佐々木 涼子
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2018 年 67 巻 4 号 p. 500-

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抄録

 骨盤底臓器脱は直接生命に危険があるものでないため,しばしば放置されてきた。その中には水腎症を伴う例があり,腎不全に至った例もある。当院女性骨盤底医学センター受診者のなかに,潜在する水腎症がどの程度存在するか,また治療により改善するか検討した。2016年1月から2017年12月までに女性骨盤底医学センターを受診した555人(のべ2,065人)のうち,骨盤底臓器脱と診断したものは265人であった。このうち手術を希望した192人を対象とした。術前検査として超音波検査を行ない,水腎症を,正常,軽度,中等度,高度に分類した。手術時に骨盤底臓器脱の程度を,ステージⅠ~Ⅳに分類した。水腎症と診断した症例は合計20人(10.4%)であり,その水腎症の程度の内訳は,軽度:9人,中等度:6人,高度:5人であった。脱のステージが高くなると,水腎症になりやすいとされているが,ステージⅣ骨盤底臓器脱20人中に,水腎症を7人に認め,うち3人が高度水腎症であった。術前中等度水腎症6人,高度水腎症5人ともに術後に水腎症は改善した。骨盤底臓器脱では水腎症を伴う症例があり,上部尿路の検査が必要である。超音波検査は水腎症の発見に有益である。水腎症が改善するまで6~10月間を要した例があり,早期発見が重要である。TVM手術では膀胱脱ばかりでなく,子宮脱でも子宮摘除をせずに治療することが可能で,水腎症の改善も期待できる。

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© 2018 一般社団法人 日本農村医学会
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