日本農村医学会雑誌
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研究報告
非結核性抗酸菌の保菌率は喀痰抗酸菌塗抹検査結果の解釈に大きく影響する可能性がある:単施設における後方視的研究
松尾 光浩月城 孝志樋口 清博
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2018 年 67 巻 4 号 p. 507-

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抄録

 喀痰抗酸菌塗抹検査は結核菌の排菌量を把握することが目的であり,結核菌の確定には培養検査または分子生物学的な検査が必要である。しかし救急医療などの状況においては,結核の補助診断として塗抹検査の結果を参考にすることが少なくない。そこで本研究では喀痰抗酸菌塗抹検査の有用性を再考する目的で,当院で施行された塗抹検査およびその培養結果を後ろ向きにカルテ調査を行なった。2012年から6年間に1,814件の喀痰抗酸菌検査が施行された。培養の結果,結核菌は26検体(1.4%)および非結核性抗酸菌は116検体(6.4%)から検出され,非結核性抗酸菌の方が有意に多かった(オッズ比4.7, P<0.001)。塗抹検査陽性の結核菌に対する感度,特異度および陽性尤度比はそれぞれ42.3%,94.5%および7.64(95%信頼区間:4.69~12.45)であった。一方,陽性的中率は0.100(95%信頼区間:0.051~0.172)であった。以上の結果から,喀痰抗酸菌塗抹検査の感度および陽性的中率が高くないために,結核診断への寄与は小さいものと考えられた。塗抹検査による結核菌の検出力は施設内の検査精度だけでなく非結核性抗酸菌の有病率も影響することから,その地域での抗酸菌疫学を把握することが塗抹結果の解釈に重要であるものと考えられる。

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