日本農村医学会雑誌
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症例報告
Tegafur/Gimeracil/Oteracil配合剤(S‒1)が奏効しQOLの改善が得られた乳癌術後多発性骨転移の1例
篠原 剛藤森 芳郎山田 博之町田 水穂
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キーワード: 乳癌, S‒1, 多発性骨転移, QOL
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2019 年 68 巻 1 号 p. 59-63

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抄録
 症例は69歳,女性。40歳時に右乳癌に対し手術の既往がある。多発性骨転移の疑いで紹介となった。PET検査では,多発性骨転移以外の病変は認めず,血液生化学検査ではCEA,CA15‒3,NCC-ST439の上昇を認め,乳癌からの多発性骨転移と診断した。手術時の切除標本では,Estrogen receptor(ER)/Progestron receptor(PgR)陽性,HER2陰性であった。Letrozole,Toremifen Citrateその後Exemestaneを使用したが,治療開始後17か月で骨転移により左股関節部に滑膜嚢胞が形成され,左下肢の浮腫を伴い歩行困難となった。QOL改善のためTegafur/Gimeracil/Oteracil配合剤(以下S‒1)を開始したところ,開始後6か月で,滑膜嚢胞および下肢の浮腫は消失し歩行可能となった。S‒1開始後11か月でCA15‒3は基準値内となった。腫瘍マーカーが徐々に上昇しているが,S‒1投与開始から3年3か月を経過した現在も,骨転移以外の転移はなく,QOLも保たれており治療継続中である。
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© 2019 一般社団法人 日本農村医学会
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