抄録
本研究は,人口減少や少子高齢多死社会が進む農村において,高齢者が「地域について感じていることや考えていること(地域についての思い)」を文脈から捉え明らかにし,農村地域高齢者の生活機能向上に向けた地域づくりに繋げるための保健師活動に関する基礎資料とすることを目的とした。
農村地域の高齢者362名の自由記述データを計量テキスト分析の手法を用いて,共起ネットワークの作成と対応分析を行なった。共起ネットワークの構造分析の結果,【子ども・若い人が少なく,増える空き家による淋しさ】【時代と共に変化する近所,近隣付き合い】【進む集落の高齢化・過疎化】【家族と共に日々生きる,過ごす大切さ】【元気に今を生き,年老いる】【病院,行政,店舗等への土地柄によるアクセスの困難と不安】の6群のカテゴリーが抽出された。対応分析による抽出語の全体的付置において,第一成分に強く寄与する因子として「町内」「大変」「過疎」「町」が抽出された。
本研究によって明らかになった内容分析のカテゴリーは,農村で生活する高齢者同士が担っている自助・互助役割と,保健サービスに代表される共助・公助機能を客観的に評価し,それらを最大限に生かした地域づくりを行なうための視点となる可能性がある。