日本農村医学会雑誌
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研究報告
医師が求める疑義照会とは何か:新潟県糸魚川市におけるアンケート調査
松尾 光浩
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2020 年 68 巻 5 号 p. 617-

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抄録

 薬剤師による疑義照会は医薬品の適正使用や安全性の確保に貢献する。近年,臨床知識を持ち合わせた薬剤師の育成が行なわれているにもかかわらず,実臨床において医師側がどのような疑義照会を求めているのか明らかにした報告はない。そこで本研究では,糸魚川総合病院に在籍する医師(62名)を対象に文部科学省が定める薬学教育コアカリキュラムを参考に作成したアンケート調査を行なった。選択肢を「是非指摘してほしい」,「指摘されても良い」,「分からない」および「指摘してほしくない」の順番で順位付けを行ない,各項目について平均順位を求めた。その結果,全32項目における平均順位は989.5±98.5であった。平均順位が有意に低かった項目は「医薬品の安全性(副作用,有害事象)」(711.3位,P=0.040)と「薬の作用(薬理作用,薬物相互作用)」(754.8位,P=0.035)であった。一方,平均順位が最も高かったのは「薬物治療,治療方針」(1,194.7位,P>0.05)であった。次に,糸魚川市内の調剤薬局にこれらの結果を開示し,薬剤師に対するアンケート調査を実施した(回収率65%)。その結果,「本研究結果は今後の疑義照会に活用できる」に対して「非常に当てはまる」または「少し当てはまる」を選択した薬剤師は28名(87.5%)と多かった。本研究から,医師は医薬品の安全性や薬理作用に関わる疑義照会を強く望んでいることが明らかとなった。今回得られた結果により薬剤師による疑義照会が促進され,医療安全の向上に貢献することが期待される。

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© 2020 一般社団法人 日本農村医学会
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