日本農村医学会雑誌
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原著
コホート内から抽出した地域在住高齢者の身体活動量と軽度認知障害との関連
小田川 敦桂 敏樹星野 明子志澤 美保臼井 香苗
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2020 年 68 巻 6 号 p. 781-

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抄録

 我が国では認知症の増加が重要な健康課題になっている。厚生労働省は認知症を予防する最も効果的な方法はMCI(Mild Cognitive Impairment)を把握し対処することであると指摘している。そこで,本研究では認知症のリスク要因である不活発な身体活動量とMCIの関連を検討することを目的とした。
 基本チェックリストによって判定したA市在住閉じこもり高齢者26名と性,年齢,居住地区をマッチさせた非閉じこもり26名を2013年コホートから無作為に抽出し,身体活動量,MCIなどを訪問調査した。その内容は基本属性,基本チェックリスト,IPAQ,MoCA-J,Kohs,HDS-R,GDS-S-J,IADLである。抽出された高齢者の身体活動量(IPAQ)から区分した身体活動の活動群と不活動群の2群間でMCIを比較するためにχ2検定,Mann-Whitney U検定を用いた。統計解析にはSPSSを用い,危険率は5%未満とした。
 身体活動不活動群は活発群に比べて殆ど身体活動がなく非活動時間が多く,健康づくりに必要な身体活動量を満たしていなかった。更に不活動群は活動群に比べてMoCA-JによるMCIが多かったが,KohsによるMCIは相違がなかった。
 このことから,健康づくりやMCI予防に必要な身体活動レベルを満たしていない不活動状態がMCIのリスク要因になることが明らかになった。本研究は地域在住高齢者から不活動者を把握し,MCIのリスクを早期に発見し対処する方法を考案する必要性を示唆している。

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© 2020 一般社団法人 日本農村医学会
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