抄録
腎疾患を持つ女性の妊娠は周産期合併症や腎機能低下のリスクが高いとされている。妊娠中から産褥期に診断された4例の腎疾患合併妊娠を経験したのでその経過をまとめた。
症例1:妊娠8週から尿蛋白が持続し25週に慢性腎臓病G4と診断された。経過と共に腎機能が増悪し,32週に胎児機能不全のため帝王切開となった。
症例2:妊娠前から尿蛋白陽性で,15週に慢性糸球体腎炎と診断された。31週より緩徐に腎機能が増悪し,37週に経腟分娩に至った。
症例3:妊娠前から尿蛋白陽性で,妊娠26週頃から血圧上昇と尿蛋白増加を認めた。36週に急性腎不全のため帝王切開となった。産後に慢性糸球体腎炎を疑われた。
症例4:妊娠28週頃から血圧管理困難で,31週に急激に肝・腎機能が増悪し帝王切開となった。産後に常染色体優性多発嚢胞腎と診断された。
腎疾患合併妊娠例では血圧や腎機能を評価しながら慎重に妊娠管理する必要がある。周産期・産褥期を通じた腎臓専門医との連携が重要である。