2020 年 69 巻 2 号 p. 126-136
当院における2019年4月から半年間の救急患者・救急搬送事例について検討するとともに,受診後の入院率が特に高い高齢者心不全例の臨床像を解析した。年齢構成を見ると70歳以上が救急患者の38.7%,救急搬送患者の61.7%を占めた。疾患構成は整形外科疾患が20.1%と最大で,次いで消化器,耳鼻科,呼吸器,脳神経,皮膚,循環器疾患の順であった。救急からの入院患者中70歳以上の高齢者は57.6%,救急搬送患者では72.8%であった。高齢者心不全入院患者は56名で,平均年齢83.5±8.3歳,男女比は1:1.67であった。入院前の居住場所は自宅が66.1%で,介護・福祉系施設からの搬送が33.9%を占めた。死亡退院は19.6%であり,退院後施設への入居例が35.7%を占めた。高齢者心不全は終末期病態の1つであり,生命予後ではなく,入院回避のための予防,QOLの希求,全人的苦痛の制御を疾患管理目標とすべきである。