抄録
症例は86歳女性。19時30分頃からの右股関節痛あり20時に受診。腹部軽度膨満軟,右股関節に圧痛を認めた。CTで右閉鎖孔内に嵌頓した小腸を認め,右閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断した。発症早期であり,腸管壊死の可能性は低いと判断して用手的に整復を行なった。施行後,右股関節痛は速やかに改善し,CTで腸管の陥入は解除されていた。待機的に腹腔鏡下の手術を行なった。腹腔内には血性腹水を認めたが,明らかな腸管虚血は認めず。腸管の拡張は解除されており,良好な視野にて手術操作が行なえた。術後経過は良好で,術後2年11か月経過した時点で再発は認めなかった。閉鎖孔ヘルニアは高齢女性に多いとされ,種々の並存疾患を持っている事も多い。用手的還納を行なう事によりリスクの高い緊急手術を回避できた事は有意義であり,腹腔鏡下に手術を行なう事により対側の評価治療が行なう事ができるのは有用であると思われた。