日本農村医学会雑誌
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症例報告
腹腔鏡による診断および洗浄・ドレナージが有効であったA群溶血性レンサ球菌による原発性腹膜炎の1例
長田 亮介今井 宗矢﨑 明香高野 宏太野池 雅実篠原 剛
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2021 年 70 巻 4 号 p. 407-413

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抄録
 A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes,GAS)による重症感染症には原発性腹膜炎の病型をとるものがある。従来この病型の初期対応では開腹術が選択されることが多かった。今回GASによる原発性腹膜炎に腹腔鏡下手術が有効であった症例を経験した。症例は30歳,女性。流産後5日目に発熱,腹痛,下痢,嘔吐の訴えで当院へ救急搬送された。急性汎発性腹膜炎の診断で,診断的腹腔鏡を行なったところ,腹腔内には膿性腹水が貯留していたが,原因病巣は認めなかった。腹腔内洗浄・ドレナージを行ない手術終了とした。術後に血液,腹水,腟分泌物培養よりGASが検出され,GASによる原発性腹膜炎と診断した。抗菌薬をAmpicillin SodiumとClindamycin Phosphateに変更し,状態は改善に向かった。GASによる原発性腹膜炎を疑う症例において腹腔鏡下手術は検討すべき初期対応である。
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