日本農村医学会雑誌
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研究報告
当院における急性上腸間膜動脈塞栓症12例の検討
齊藤 佑介佐藤 明史榎本 好恭
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2023 年 71 巻 5 号 p. 391-397

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抄録
 上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMA)塞栓症は,急性腹症患者の約1%とされる比較的稀な疾患であるが,診断・治療技術が向上した現在においても死亡率が約50%と高く,予後不良な疾患である。今回2012年1月から2022年2月に当院で経験したSMA塞栓症12例について検討した。全ての症例で心房細動の既往を認めた。5例は全身状態不良のため手術に至らなかった。手術を施行した7例のうち,3例は腸管切除を要した。腸管非切除の4例は腹痛発症からgolden time(約10時間)以内に血栓除去されていたのに対し,腸管切除を要した3例は血栓が除去されるまで10時間以上経過していた。手術症例のうち,2例にsecond-look手術を施行し,そのうち1例に腸管切除を施行した。腸管切除症例は,非切除症例と比較し退院までの期間が延長していた(平均入院期間130.5日vs32.6日)。手術施行症例は,7例全てで死亡退院を認めなかった。一方で手術非施行症例は全例死亡退院となった。手術適応について,年齢や発症から診断までの時間に有意差を認めなかった。今回の検討より,急激な腹痛を訴える患者に対してはSMA塞栓症を必ず鑑別に挙げることで,発症早期に診断し,腸管温存が期待されるgolden time以内に血流再開させることが重要であり,患者の全身状態が安定している症例に対しては,発症からの経過や年齢に関係なく,開腹下の血栓除去手術や腸管切除といった治療まで含めて治療方針を検討するべきであると考えられた。
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© 2023 一般社団法人 日本農村医学会
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