日本農村医学会雑誌
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71 巻, 5 号
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研究報告
  • ─現状と市町村保健師としての支援の方向性─
    渡邊 正樹
    2023 年 71 巻 5 号 p. 383-390
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/05
    ジャーナル フリー
     在宅で生活することを望む高次脳機能障害者および家族が,安心して暮らすことができるように,高次脳機能障害者および家族への支援の実態を明らかにし,保健師としての支援の方向性を考察することを目的に本研究を行なった。医学中央雑誌Web(以下,医中誌)により,1983年から2021年において,「高次脳機能障害」「家族」「地域」「支援」をキーワードにそれぞれ組み合わせて検索を行ない,研究目的および「家族」「支援」に着目し,目的に一致した文献16件を対象に分析を行なった。高次脳機能障害者を支える家族の研究は,社会保障制度の不十分さや,支援する関係機関・関連職種の連携の重要性などに関する研究が多く,看護師による研究は,回復期病棟における援助の検討や看護師の困難感,セルフケアを高めるための取り組み,在宅における家族の介護負担感,主介護者である家族亡き後の支援の構築の必要性などの研究が行なわれていた。今後は,市町村保健師による高次脳機能障害者および家族の支援として,介護者である家族の亡き後への不安をはじめとする日常生活における相談窓口としての役割を担うことや,定期的に家庭訪問を実施することによる心配・不安への早期対応,地域に在職する関係職種と連携・協働などの体制を構築するためのコーディネーターとしての役割を担い,その状況に応じて支援できるように支援の全容を把握し,支援体制を整える必要があると考える。
  • 齊藤 佑介, 佐藤 明史, 榎本 好恭
    2023 年 71 巻 5 号 p. 391-397
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/05
    ジャーナル フリー
     上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;以下,SMA)塞栓症は,急性腹症患者の約1%とされる比較的稀な疾患であるが,診断・治療技術が向上した現在においても死亡率が約50%と高く,予後不良な疾患である。今回2012年1月から2022年2月に当院で経験したSMA塞栓症12例について検討した。全ての症例で心房細動の既往を認めた。5例は全身状態不良のため手術に至らなかった。手術を施行した7例のうち,3例は腸管切除を要した。腸管非切除の4例は腹痛発症からgolden time(約10時間)以内に血栓除去されていたのに対し,腸管切除を要した3例は血栓が除去されるまで10時間以上経過していた。手術症例のうち,2例にsecond-look手術を施行し,そのうち1例に腸管切除を施行した。腸管切除症例は,非切除症例と比較し退院までの期間が延長していた(平均入院期間130.5日vs32.6日)。手術施行症例は,7例全てで死亡退院を認めなかった。一方で手術非施行症例は全例死亡退院となった。手術適応について,年齢や発症から診断までの時間に有意差を認めなかった。今回の検討より,急激な腹痛を訴える患者に対してはSMA塞栓症を必ず鑑別に挙げることで,発症早期に診断し,腸管温存が期待されるgolden time以内に血流再開させることが重要であり,患者の全身状態が安定している症例に対しては,発症からの経過や年齢に関係なく,開腹下の血栓除去手術や腸管切除といった治療まで含めて治療方針を検討するべきであると考えられた。
症例報告
  • 高木 健裕, 小林 聡, 関村 敦, 前田 孝, 加藤 真司, 堀 明洋
    2023 年 71 巻 5 号 p. 398-405
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/05
    ジャーナル フリー
     症例は72歳,女性。穿孔性S状結腸癌に対して腹腔鏡下結腸部分切除及び単孔式人工肛門造設を施行された。再発なくフォロー終了されていたが術後25年経過しS状結腸人工肛門部に腫瘍を認め,精査にてリンパ節転移を伴う人工肛門部癌と診断された。人工肛門部皮膚を全周性に切開して同部位にApplied Alexis® Wound Retractorを装着して腹腔鏡手術を施行した。D3リンパ節郭清及び脾弯曲結腸を授動して左半結腸を切除し人工肛門を再造設した。人工肛門部癌に対する腹腔鏡下手術は低侵襲にリンパ節郭清や腸管授動を施行でき,有用な術式と考えられたため報告する。
  • 前田 孝, 小林 聡, 高木 健裕, 駒屋 憲一, 加藤 真司, 西塔 誠幸, 堀 明洋
    2023 年 71 巻 5 号 p. 406-411
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/05
    ジャーナル フリー
     症例は75歳の男性。健診の胸部レントゲン写真で右中肺野に結節影を指摘され,その精査で胸部CTを施行された。この時,偶然に腹腔内腫瘍を指摘され,当科に紹介となった。
     造影CTでは左上腹部から中腹部に,16×10×5 cm大の腫瘍を認めた。境界明瞭で内部は均一な脂肪濃度であった。腫瘍は胃を腹側に圧排していたが,本人に自覚症状はなかった。MRIの所見も同様に内部は均一な脂肪成分であり,明らかな非脂肪成分を含んでいなかった。腹腔内脂肪腫が疑われたが,その大きさから高分化型脂肪肉腫の可能性を否定できず,根治のため手術を施行した。
     術中所見では,横行結腸間膜に境界明瞭な柔らかい腫瘍を認めた。摘出した腫瘍の重量は612gであった。病理学的には,成熟脂肪細胞の増殖を認め,悪性を示唆する所見を認めなかった。
     腸間膜脂肪腫はまれな腹腔内腫瘍であり,文献的な考察を加えて報告する。
  • 叶多 諒, 仲野 宏, 金澤 匡司
    2023 年 71 巻 5 号 p. 412-416
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/05
    ジャーナル フリー
     脾破裂は外傷性と非外傷性に分けられ,非外傷性脾破裂の原因として血液疾患や悪性腫瘍,感染症などが挙げられ,極めて稀である。症例は80歳男性。左上腹部痛を訴え,近医から精査加療目的に当院に紹介となった。当院到着時,バイタルサインは安定していたが造影CTで脾被膜の連続性途絶,脾周囲,骨盤底には血腫を疑わせる液体貯留を認めた。外傷歴はなく,非外傷性脾破裂の診断で,緊急開腹脾臓摘出術を施行した。術後経過は良好で術後11日目に退院した。本症例では既往に血液疾患などは認めず,またウイルス感染を疑う臨床所見などは認めなかった。病理診断でも悪性腫瘍は否定的であり,特発性脾破裂の診断となった。特発性脾破裂に対して脾臓摘出術を施行した1例を経験したため報告する。
資料
  • 小田 康之, 寺澤 実, 近藤 憲二, 石黒 秀典
    2023 年 71 巻 5 号 p. 417-423
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/05
    ジャーナル フリー
     当院ではアイソトープ検査を行なうため,放射性同位元素の取り扱いをしている。放射性同位元素取り扱い施設における災害時の対応は放射性同位元素に対する対処方法が必要となるなど通常の災害時の対応とは異なってくる。そのため関係省庁から出された通知などで連携を含め事故に対応し得る体制整備を図ることとされている。そのため,病院単独での防災対策だけではなく,地域の消防機関である消防本部との連携を含めた包括的な体制整備が必要とされている。
     そこで,当院では平成26年度より災害時の放射線管理区域内での消火・救助活動が円滑にできるよう,江南市消防本部との連携の取り組みを行なってきた。その結果,消防本部との防災共通マニュアルの作成,当院アイソトープ施設を使用した火災訓練の実施といった活動を行なう事が出来た。また,放射線に関する講習会を行なうことにより,消防職員に対する放射線の知識向上に寄与することもできた。これらを含めた当院での連携強化の取り組みについて報告をする。
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