症例は75歳の男性。健診の胸部レントゲン写真で右中肺野に結節影を指摘され,その精査で胸部CTを施行された。この時,偶然に腹腔内腫瘍を指摘され,当科に紹介となった。
造影CTでは左上腹部から中腹部に,16×10×5 cm大の腫瘍を認めた。境界明瞭で内部は均一な脂肪濃度であった。腫瘍は胃を腹側に圧排していたが,本人に自覚症状はなかった。MRIの所見も同様に内部は均一な脂肪成分であり,明らかな非脂肪成分を含んでいなかった。腹腔内脂肪腫が疑われたが,その大きさから高分化型脂肪肉腫の可能性を否定できず,根治のため手術を施行した。
術中所見では,横行結腸間膜に境界明瞭な柔らかい腫瘍を認めた。摘出した腫瘍の重量は612gであった。病理学的には,成熟脂肪細胞の増殖を認め,悪性を示唆する所見を認めなかった。
腸間膜脂肪腫はまれな腹腔内腫瘍であり,文献的な考察を加えて報告する。
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