2016 年 105 巻 5 号 p. 894-904
多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は,若年成人を侵す神経難病では最も多く,中枢神経髄鞘を標的とする自己免疫疾患と考えられているが,証明はできていない.近年,再発や新規病巣の出現を抑制できる疾患修飾薬が次々と開発され,日本でも4種類が臨床応用されるようになった.最初の疾患修飾薬であるインターフェロンベータ(interferon beta:IFNβ)は多面的な作用機序を有し,再発抑制は30%程度に過ぎなかった.しかし,最近では切れ味のよい分子標的薬が開発され,顕著に再発は抑えられるようになった.それでもなお,障害の慢性的な進行を抑制できると証明された疾患修飾薬は開発されておらず,大きな課題として残されている.