2023 年 72 巻 4 号 p. 339-344
大動脈内バルーンパンピングの後負荷軽減作用が,閉塞性肥大型心筋症患者の左室流出路狭窄を引き起こし,心原性ショックを来した1例を経験した。患者は60代の女性で子宮体癌手術前に閉塞性肥大型心筋症と狭心症を指摘された。手術中の冠動脈血流維持のため手術前に大動脈内バルーンパンピングを留置した。しかし麻酔導入を契機にショックを来し,多量の昇圧薬を要した。手術後もショックが遷延し,経胸壁心エコー検査では左室流出路狭窄と僧帽弁逆流が出現しており,大動脈内バルーンパンピングによる後負荷軽減作用が左室流出路狭窄を増悪させている可能性があったため,停止したところ昇圧薬が切れるほど劇的にショックを離脱し,エコー所見も改善した。大動脈内バルーンパンピングは冠動脈血流を維持するなどの利点があるが,閉塞性肥大型心筋症患者では後負荷軽減作用が左室流出路狭窄を増悪させることに留意する必要がある。