日本農村医学会雑誌
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72 巻, 4 号
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原著
  • 原田 康夫, 小林 茉穂, 伊藤 智恵, 伊神 実咲, 三島 侑華, 山田 映子, 左右田 昌彦
    2023 年 72 巻 4 号 p. 299-306
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー
     本調査は採血検体における強溶血(Hb値500mg/dLを超える溶血)が結果値に及ぼす影響について非溶血,溶血(Hb値500mg/dLを超えない溶血),強溶血に分類し調査した。項目はTP,ALB,T-Bil,D-Bil,AST,ALT,LD,ALP,γ-GT,CK,AMY,ChE,BUN,Cre,Na,K,Cl,Ca,UA,TG,T-Cho,HDL-C,LDL-C,CRPの24項目とし実臨床の検査結果を用いた。今回我々が調査した結果から溶血,強溶血の誤差の関係について3つのGroupに区分することができた。Group Aは非溶血と溶血の間に誤差を認め,強溶血ではさらに強い誤差を認めた場合(T-Bil,AST,LD,Na,K,Ca,UA)。Group Bは非溶血と溶血の間に誤差を認めず,強溶血にて誤差を認めた場合(ALB,D-Bil,ALT,γ-GT,CK,AMY,TG,T-Cho,HDL-C,LDL-C)。Group Cは溶血,強溶血ともに誤差を認めなかった場合(TP,ALP,ChE,BUN,Cre,Cl,CRP)。その中でGroup Bについては新たな知見であった。溶血検体の測定が避けられない状況ではその影響を臨床検査技師が認識し,実臨床に生かせる形で提供することが重要である。
  • 栗山 満美子, 中尾 心人, 木下 亮輔, 清利 紘子, 杉原 雅大, 武田 典久, 深井 美樹, 山田 和佳, 北島 聖晃, 露木 琢司, ...
    2023 年 72 巻 4 号 p. 307-313
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー
    〔背景と目的〕呼吸器診療において,胸水を用いたセルブロック(Cell Block;CB)は頻用されている。一方で気管支鏡検査において鉗子・ブラシ洗浄液を用いたCBが病理診断に有用であったという報告は少なく,この有用性を明らかにするために後方視的に症例検討を行なった。
    〔対象と方法〕2016年6月から2021年5月の間に当院で気管支鏡検査時に,鉗子・ブラシ洗浄液を用いたCBを作成した症例を検討対象とし,これにより追加情報が得られた症例について詳細な検討を行なった。
    〔結果〕対象期間中に鉗子・ブラシ洗浄液を用いたCBを作成したのは138例であった。このうち102例でEBUS-GSを用いていた。最終診断は肺癌114例,感染症10例,転移性肺腫瘍8例,リンパ増殖性疾患2例,サルコイドーシス1例,器質化肺炎1例であった。CBにより追加情報が得られたのは13例で,すべて悪性腫瘍の症例であった。
    〔結論〕気管支鏡検査における鉗子・ブラシ洗浄液を用いたCBは一部の症例において病理診断に有用である。
症例報告
  • 高木 理光, 桐山 香奈子, 三輪 正治, 今井 信輔, 小野江 雅之, 前田 晃男
    2023 年 72 巻 4 号 p. 314-318
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー
     昨今,救急医療の現場において急性腹症の画像検査には単純X線CTを第一選択とされることが多い。超音波検査は術者の技量に左右されることや,所見が主観的であるなどという理由が急性腹症画像診断の第1選択から避けられる理由であると思われる。しかし単純CT検査に比べ腹部超音波検査の方が情報を多く得られた症例を度々経験する。今回は右下腹部痛にて単純CTが撮像され盲腸部周囲に一塊の膿瘍形成が疑われた症例に対し超音波検査を施行したところ膿瘍形成している原因に至るまでの詳細な情報が得られた2症例を報告する。今後,地域医療構想などの医療費削減政策が進み,X線CTなどの高額医療機器を配置する施設が減少する可能性もあり,安価で機動性に優れる超音波検査の必要性が高くなる事が考えられる。単純CT検査に比べ超音波検査は多くの情報を含んでおり,急性腹症画像診断の第1選択は超音波検査であるべきと考える。そのため超音波検査に携わる者は,知識と走査技術の継続的な習得が重要であると考える。
  • 久我 貴之, 重田 匡利, 矢野 由香, 池下 貴広
    2023 年 72 巻 4 号 p. 319-324
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー
     小児卵巣未分化胚細胞腫の集学的治療後に自然妊娠され,陣痛が自然発来し,経膣分娩出来た症例を経験したので報告する。症例は38歳女性。中学生の時,腹部膨満,発熱,呼吸困難で当院小児科を受診した。CT検査で巨大腹部腫瘤と診断され大学病院小児科に紹介された。紹介先では,右卵巣悪性腫瘍,未分化胚細胞腫疑いと診断,家族の希望を踏まえて妊孕性を考慮した治療方針とし,右卵巣腫瘍摘出術および腹部リンパ節摘出術を施行,左卵巣を温存した。術後病理組織学的検査で卵巣未分化胚細胞腫,リンパ節転移陽性,腹水細胞診classⅤ,stageⅢcと診断された。術後BEP化学療法が施行され,その後は当院小児科に,成人後は当院外科に定期通院となり,再発なく経過した。術後12年で正常月経を認め,術後24年9か月を経て妊娠疑いで当院産婦人科を受診,妊娠成立が確認された。妊娠34週6日目に破水し,検査の結果同日大学病院に緊急転院となった。妊娠35週+1日目に経膣分娩で出産した。出産後の経過においては母子とも明らかな異常を認めず,出産後1年9か月現在母子とも健康である。Child及びadolescent and young adult(CAYA)世代女性癌患者における妊娠出産は重要な問題の1つである。女児では,予後と妊孕性を十分考慮して患者側とともに治療方針を決定することが重要である。
  • 黑岩 尚之, 高橋 孝治, 白井 謙太朗, 高橋 翔太, 廣田 晋, 山本 信二, 渡辺 章充
    2023 年 72 巻 4 号 p. 325-331
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー
     生後3か月頃から非典型的なてんかん発作で発症した低悪性度てんかん原性腫瘍(Lowgrade epilepsy-associated tumors/LEAT)を経験した。LEATは小児において症候性てんかんの重要な鑑別疾患である。初発症状は主にてんかん発作で,焦点発作が多いとされる。症例は「十数秒程度の両上肢の震えや顔色不良,反応が一過性に乏しくなる様子」を主訴に当科に紹介された。当科初診時,発育・発達は月齢相応で,発作時の動画からもてんかん発作は否定的であったが,発作時脳波でてんかん性異常波を認めた。その後,急激な頭囲拡大がみられ当院緊急入院となり,緊急ドレナージ手術と,待機的に開頭腫瘍摘出術を施行した。病理診断の結果,線維形成性乳児星細胞腫/神経節膠腫(desmoplastic infantile ganglioglioma/astrocytoma [DIG/DIA])と診断した。DIG/DIAはLEATの一群に含まれるが,症例報告の初発症状では頭囲拡大が多く,本症例のような非典型的なてんかん発作は見逃されている可能性がある。稀ではあるが緊急の対応を要することもあり,早期に鑑別すべき疾患と考える。
  • 酒徳 弥生
    2023 年 72 巻 4 号 p. 332-338
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー
     症例は83歳,男性。食道癌術後1年6か月,無再発で経過していたが,全身倦怠感があり,頻脈性心房細動による心不全のため入院となった。入院6日目の胸部単純X線で両側気胸と両側横隔膜下の遊離ガスを認め,CTで多量の腹腔内遊離ガスを認めた。腹部所見に乏しく,炎症反応の上昇も認めなかったことから,消化管穿孔は否定的であった。食道癌の手術歴があることから右自然気胸から流出したairが対側胸腔および腹腔内へ移行したと考え,右胸腔ドレーンを留置した。両肺の虚脱は改善し,腹腔内遊離ガスは消失したが,air leakageは持続し,自己血およびブドウ糖液による胸膜癒着術を行なったが改善しなかった。低心機能のため,手術は困難と判断し,OK-432を用いて胸膜癒着術を施行し気胸は改善した。食道癌術後の気胸に対して,OK-432を用いた胸膜癒着術の本邦報告例は検索した限りでは認めず,文献的考察を加えて報告する。
  • 太田 一志, 手崎 貴友, 関谷 憲晃, 衣笠 梨絵, 大矢 真, 竹内 直子, 有馬 一
    2023 年 72 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/22
    ジャーナル フリー
     大動脈内バルーンパンピングの後負荷軽減作用が,閉塞性肥大型心筋症患者の左室流出路狭窄を引き起こし,心原性ショックを来した1例を経験した。患者は60代の女性で子宮体癌手術前に閉塞性肥大型心筋症と狭心症を指摘された。手術中の冠動脈血流維持のため手術前に大動脈内バルーンパンピングを留置した。しかし麻酔導入を契機にショックを来し,多量の昇圧薬を要した。手術後もショックが遷延し,経胸壁心エコー検査では左室流出路狭窄と僧帽弁逆流が出現しており,大動脈内バルーンパンピングによる後負荷軽減作用が左室流出路狭窄を増悪させている可能性があったため,停止したところ昇圧薬が切れるほど劇的にショックを離脱し,エコー所見も改善した。大動脈内バルーンパンピングは冠動脈血流を維持するなどの利点があるが,閉塞性肥大型心筋症患者では後負荷軽減作用が左室流出路狭窄を増悪させることに留意する必要がある。
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