日本農村医学会雑誌
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ビニールハウス兼営農夫の健康調査
愛知地区
下村 尚一荒木 紹一猪飼 茂子荒川 忠男
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1973 年 21 巻 4 号 p. 427-434

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抄録

海部郡十四山村地区のハウス農民を対象として, 昭和45年5月, 45年11月, 47年1月, 47年5月の4回にわたる検診によって, 農繁期, 農閑期の健康状態の調査を行なった。我々は農民の自主的な受検の形をとっている為, 農繁期, 農閑期の比較と同一対象による継続検査成績の比較とを分析した。
1, ハウス栽培状況
ハウス耕作面積は, 平均約25aで全国平均を上まわっている。ハウス構造は暖房設備はないが, 大部分鉄骨造りで, 全戸に換気窓を持ち, ハウス構造はほぼきまったようである。
2, 健康状態の比較農繁期のハウス農業労働時間は, 農閑期にくらべて, 平均で約3時間長い。睡眠時間も同様に農繁期が短いが, 農閑期との差は少なく, 農繁・閑期とも特に睡眠時間不足の状態はみられなかった。農夫症症状, 疲労調査では, 農繁期に訴えが多かったが, 農繁・閑期を通じ, 「腰が痛くて, 全身がだるく, 眠たくて, 目がチラチラする。どわすれしやすい」といったハウス農民特有の症状がみられた。
3, 検査成績女子に貧血傾向がみられ, やや農繁期に貧血傾向が増す傾向がある。GPT, TCh, ChE, TPには農繁・閑期の差はみられなかった。
1名に無自覚の肝機能障害者を発見し, 入院治療によって全治せしめた。肺機能検査においても, 農繁・閑期の差はみられなかった。心電図検査では, 昭和39年度の調査にくらべ, 有所見者率が高かった。有所見者を冠拡張剤で1ヵ月治療した結果, STの低下の改善をみたものがあり, 又農繁期の検査でST低下の消失をみた者もある。ここで農閑期といっても, 1月のことで, この時には, 既にハウス内作業では定植も終っており, 報告によれば, ハウス農夫の定植期に, 既に血清Kの低下をみるといわれており, 1月はハウス内外気温の差もあり, ハウス農夫の身体はむしろストレス期に相当するかもしれない。従って本調査に於ける1月の心電図検査は, 農閑期の変化というべきでないといえよう。然し, ハウス農民にみられる心電図上のSTは, 可逆的変化によるものが多いといえよう。

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