日本農村医学会雑誌
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農村社会階級と農村医学
純農村の実態調査
国見 辰雄
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1955 年 3 巻 4 号 p. 13-19

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抄録

北関東一純農村を対象として, 昭和26年から28年まで, 社会階級と疾病および衛生の状況ついて, その実態調査を行った
社会階級の区分については多く福本氏の法を採用し, 地主, 富農, 中農, 貧農, 農業労働者および在村勤労者, その他の諸階級として, さらにそれらを便宜上農業で生活に余裕の生ずる社会上層, 農業だけで生活を維持するのに丁度満足な社会中層, および農業だけでは生活を維持するに困難な社会下層の三つに区分した。これら諸階級の間における医学上の不均衡については, 特に社会的影響の多い疾病に著しく現われている。すなわち
(イ) 結核罹患率は下層ほど高く, 感染経路は農村の代表的階層である中層に家族内感染が多く認められ, 社会下層には出稼感染が多く認められる。
(ロ) 赤痢, 疫痢, 日本脳炎の急性伝染病は社会下層ほど多い。
(ハ) 姙娠調節は特に社会下層には不充分である。乳児の出生時体重は階級間に差異はないが, 満一才までの間に社会下層において発育がおとり, 一方満一才未満乳児死亡率は社会上層程高い。さらにこれらを乳児死因およびα値によって
(ニ) 学童における社会階級間における栄養指数の差異は, 男女反対である。
(ホ) 脳溢血の死亡率は社会上層ほど高い。
(ヘ) 受診率は社会上層ほど高い。
(ト) 訂正死亡率は社会上層ほど高い。
以上の事項から, われわれは進歩せる治療および予防医学とともに, それらを完全に適合させ得る農村の社会的条件の必要なる事を強調したい。

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