抄録
私達は農協婦人部の健康管理活動の一環として, 農協婦人部の協力で, 過去10か月間に福島県会津地方の1市10町6村の甲状腺検診を施行した。今回, ある程度の成績が得られたので, 主な日本各地の甲状腺検診の成績と比較した。検診対象は, 女性2,025名, 男性456名, 合計2,481名であったが, 甲状腺腫を触れた人は女性204名 (10.1%), 男性4名 (0.9%), 合計208名 (8.4%) で, 釜石より甲状腺腫は少なく, 甲府および千葉より多かった。152名の二次検診の成績では単純性甲状腺腫35名 (23.0%), 亜急性甲状腺炎1名 (0.7%), 慢性甲状腺炎44名 (28.9%), バセドウ病8名 (5.3%), 結節性甲状腺腫64名 (42.1%) で, 慢性甲状腺炎と結節性甲状腺腫が71.0%を占めていた。他の地方でも, 二次検診の成績は私達と同様に, 慢性甲状腺炎と結節性甲状腺腫が多数を占めていた。慢性甲状腺炎では釜石が一番多く, 次いで会津, 甲府, 千葉の順であった。結節性甲状腺腫のうち, 腺腫および腺腫様甲状腺腫では会津は釜石とほぼ同率で, 甲府および千葉より多かった。また甲状腺癌では会津は釜石および甲府より少なかったが、千葉とほぼ同率であった。バセドウ病では会津は甲府および千葉より多かった。以上の成績から、会津地方の特異性は必ずしも認められなかった。