日本農村医学会雑誌
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秋田県南農村における若壮年者の健康状態に関する研究
林 雅人
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1989 年 38 巻 2 号 p. 90-101

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抄録

秋田県南農村部における若年者の死因と検診から得られた異常頻度, 検査値の平均等を, 栄養調査, 生活歴と対比しながら検討し次の結果を得た。(1) 当地方で若年者の脳血管疾患は全国の2倍以上もあり, とくに女性で多いのが目立つが血圧の異常者はむしろ男に多く, 血圧以外の関与を考慮する必要がある。(2) 検査値の異常では20代より30代の方が多く, 死亡頻度の増加を裏付けている。ただ20代に比べ30代の死亡率が急増しているほど検査値では顕著には出ていなかった。家族歴等の検討が必要と思われる。(3) 高血圧, 肥満の食生活の検討では正常者群との差がみられず, 若年者では食習慣よりむしろ遺伝的素因 (若年者でも家族歴に高血圧がいるものは拡張期圧は既に高いなど) による影響が大きい。(4) 貧血は女性の農業群に多く, 蛋白質, 動物性蛋白質ともに低値傾向にあった。(5) GOT, GPT, γ-GTPは男性に多く, 獣鳥肉類の摂取不足 (P>0.01), アルコール多飲傾向がみられた。(6) 高コレステロール者は脂質摂取が多く (P<0.05男), 食品別では乳, 乳製品が多かった (P<0.05男)。(7) 中性脂肪は男女とも農業群で高値を示していた。食生活では中性脂肪の多い男性でみると予想外に中性脂肪群で炭水化物 (P<0.01), 穀類エネルギー (P<0.05) は正常群より少なく, アルコールで代償しているように思われた。

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