日本農村医学会雑誌
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農漁村における飲酒習慣と健康との関連に関する研究
とくに, 肝臓, 膵臓, 糖および脂質代謝に及ぼす影響について
石田 邦夫山田 博康小出 和伸石田 和史久保 敬二石橋 不可止高科 成良
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1991 年 40 巻 1 号 p. 12-24

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抄録

農漁村における飲酒習慣の肝および膵臓に及ぼす影響ならびに糖, 脂質代謝へ与える影響を検討する目的で, アルコール摂取量と肝機能検査, 膵酵素, 75gブドウ糖経口負荷試験時の血糖およびインスリン, ならびに中性脂肪との関連について検討し以下の成績を得た。
1.GOT, GPTおよびγ-GTPは飲酒量の増大に伴って有意に上昇し, かつγ-GTPがもっとも鋭敏であった。2.最近1年間の1日あたりの飲酒量の増加とともに, 血清アミラーゼは有意に低下しエラスターゼ1は有意に上昇した。また推定過去総飲酒量の増大に伴って血清アミラーゼには低下, エラスターゼ1とトリプシンには上昇の傾向がみられた。しかしこれらマーカーの平均値はいずれも正常範囲内にあり, 異常率も考慮するとアルコールによる膵障害の可能性をスクリーニングするためには, 血清アミラーゼよりも少なくともトリプシンやエラスターゼ1の方がより有用と思われた。3.摂取総カロリーに占めるアルコールカロリーの増加に伴って, 空腹時血糖および759ブドウ糖経口負荷後2時間血糖は上昇の傾向を示し, 中性脂肪は有意に上昇した。また759ブドウ糖経口負荷後1および2時間においては, アルコール摂取による相対的な高インスリン血症の状態が存在することが示唆され, 中等度の飲酒 (清酒1級酒換算2.15合/日) は, インスリン抵抗性を増大させ, 耐糖能を悪化させている可能性が推測された。

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