抄録
当施設で過去5年間に行われた緊急手術255症例を対象に検討した。70歳以上の高齢者 (平均76.7歳) は45例, 18%を占めていた。疾患の内訳ならびにその特徴は,(1) 汎発生腹膜炎14症例 (虫垂炎除外): 悪性疾患の穿孔もさることながら, 内視鏡等による医原性穿孔が1/3を占めていた。(2) 急性虫垂炎12症例: 腹膜炎併発は約半数に認められたが, 1例のみ汎発性で他はすべて限局性であった。(3) イレウス9症例: 大腸癌によるものが5例と約半数を占めていた。治癒切除不能であり、内4例までが人工肛門造設に終わった。(4) 嵌頓ヘルニア7症例: 全例女性で, 平均80.6歳とより高齢であった。(5) 上腸間膜動脈血栓症2例。(6) 交通外傷1例。(7) 82.2%の症例が術前より合併症を有しており、上位3疾患は不整脈, 高血圧, 糖尿病であった。(8) 術後合併症は, 20.9%の症例に発生し肺炎が最も多かったが, 他の合併症は良くコントロールされていた。術後の遠隔成績は1年健存率は93.5%であったが, 今回の対象の平均年齢が76.8歳であることを考慮すると良好な成績と考えられた。