日本農村医学会雑誌
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視触診による乳癌集団検診の限界とその意義
特に腫瘍倍増時間による検証
寺島 秀夫島田 友幸平山 克荻原 忠
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1999 年 47 巻 5 号 p. 713-717

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抄録

1991年4月から1997年1月の過去6年間で, 我々の施設における乳癌手術症例は146例あった。このうち37例の患者が集団検診歴を有しており, 3群に分類された。その3群とは, 中間期発見乳癌18例 (中間期群), 集団検診で発見された乳癌12例 (集団検診群), 集団検診後に外来で定期的に検査を受け発見された7例 (外来群) である。視触診による集団検診の限界と効果を検証する目的でこの37例を対象に特に腫瘍倍増時間に着目し7つの臨床病理学的な因子について解析した。すなわち, 体脂肪率, 腫瘍倍増時間から算出した検診時の推定腫瘍径, 検診から手術までの期間, 手術時の実側腫瘍径, 組織型, リンパ節転移, 病期分類について解析した。早期乳癌の比率は, 3群全体として集団検診歴のない109例に比べ有意に高かった (59.4%vs32.1%, p<0.01)。しかしながら, 以下の問題点が明らかになった。集団検診では2cm以下の腫瘤を発見することは困難と考えられた。中間期群の検討より, 自己検診でも2cm前後で乳房腫瘤を発見し得ること, そして集団検診には自己検診と比べ明確なadvantageがないことが示唆された。さらに, 外来群ではリンパ節転移の状態からより早期の発見が望まれることが示された。以上より, 視診触診による集団検診の意義と効果を以下のごとく結論した。第1点は自己検診の啓蒙と指導である。第2点として, riskのある乳腺の拾い上げと医療機関での定期検査により1cm以内で乳癌を発見することである。

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