高齢者の肝細胞癌 (HCC) 症例に対する化学塞栓療法 (TACE) 反復施行例の成績について, 若年者症例を対照として検討した。2回以上のTACEを主たる治療として行ったHCC症例のうち, 初回治療時の年齢が70歳以上の28例を高齢者群 (O群), 55歳以下の23例を若年者群 (Y群) とした。TACEはlipidol TAI (またはlipiodol TAE) を3か月に1回行うことを原則とし, 各群全症例におけるのべ施行回数はO群で157回, Y群で186回だった。両群で性, Child分類, performance status, 病因, 飲酒歴, 肝硬変の合併, 主腫瘍径, Stageに差はみられなかった。TACEの施行回数は, O群5.6±4.2, Y群8.1±7.0で差がなかった。O群とY群において抗癌剤の種類および1回あたりの動注量には差がなかった。PR以上の効果が1回以上得られた症例は, O群で28例中10例で, Y群で23例中13例だった (NS)。O群ではのべ6回重篤な副作用 (骨髄抑制2, 十二指腸潰瘍1, 胸水1, 脳症1, 敗血症1) がみられたのに対し, Y群ではみられなかった (P<0.01)。1, 2, 3, 5年の各生存率 (%) はO群では74, 52, 27, 14, Y群では65, 50, 46, 36でY群で有意に高かった (P<0.01, Mantel-Cox法) が, 2年までの生存率は同等だった。肝疾患関連の死因は肝不全, 癌死, 静脈瘤破裂の順に, O群で10例, 6例, 5例, Y群で9例, 4例, 1例だった (NS)。TACEは高齢者HCC症例において, 骨髄抑制などの副作用が多いが, 若年者と同様に反復施行でき同等の抗腫瘍効果がえられた。副作用に留意しながら行えば, 主たる治療法として有用であると考えられた。
抄録全体を表示