抄録
平成8年7月から平成12年6月の間に足助訪問看護ステーションを利用された206例のうち, 死亡された107例を対象に, 在宅死の背景を病院死と比較検討した。在宅死は39例 (36%), 病院死は68例 (64%), 死亡時の平均年齢はそれぞれ87.1±9.5歳, 82.2±9.8歳であった。在宅死の比率は経年的に増加し, 平成12年は在宅死の比率が高かった。在宅死群と病院死群の問に基礎疾患, 男女差, 住所 (病院から利用者宅への距離) に関する偏りはなかった。在宅死群では日常生活自立度の低い傾向と, 主たる介護者以外の協力者が多い傾向がみられた。また在宅死群では疼痛や呼吸苦などの訴えのない人が有意に多かった。在宅死か病院死かの生前の意志決定についてみると, 在宅死群では明らかに本人によるものが多く69%を占めていた。以上から, 在宅死を規定する因子として, 本人による意志表示, 主な介護者以外の家族が在宅ターミナルケアに協力できること, および患者本人からの訴えが少ないこと, が重要であると考えられた。