抄録
高齢者を65歳以上74歳以下 (I群) と, 75歳以上92歳以下 (II群) に分け, 術前呼吸機能 (%肺活量:%VC, 一秒率: FEV%, 一回換気量: Vs) 並びに機械的陽圧換気時の, 呼吸一回換気量 (Ve), 吸気時最大気道内圧 (PIP), コンプライアンス (compliance), 呼気終末二酸化炭素分圧 (PETCO 2) の変化を比較し, 高齢者における至適設定一回換気量 (Vm) の検討を行った。II群でFEV%の有意 (P<0.0001) 低下,%VC, Vsの有意な上昇がみられ, 加齢とVs, VsとVe,%Vcとcompliance, FEV 1.0%とPIPが有意に相関した。%VcとFEV1.0%より陽圧換気時のPIP, complianceの変化が予測可能であり, 換気設定の目安となりうると思われた。従来より行われているVm 10ml/kgと13ml/kgの比較では, I群でVe, PIP, complianceに有意の上昇, PETCO 2に有意の低下が見られたが, II群ではcomplianceの有意の上昇はなかった。これにより, I群では, Vmを13ml/kgとするのが換気条件として有利であるが, II群ではVmを10ml/kgとするのが有利であることが示唆された。高齢者の陽圧換気時はVeを多めに, PIPを低めに調節し, PETCO 2の低下しすぎない範囲で最大のcomplianceを得ることが, かなり狭い許容量で要求されると思われた。