1988 年 25 巻 4 号 p. 271-280
外傷性胸椎腰椎損傷患者42名について初期治療法別に検討し次の結果を得た.(1)神経症状の変化に対する初期治療法間の有意差は認めない.(2)手術例の方が保存例に比し坐位の開始は早いが,ADLの最終到達度には差がない.ADL獲得には受傷時神経症状,治療法,年齢,合併症,治療施設などが影響を与える.(3)完全麻痺患者の体幹筋力は,健常者と異なり,前屈筋力が後屈筋力より大きい.また体幹可動域では長坐位前屈角度が健常者より大きく,回旋角度では後方長範囲固定の影響がみられる.(4)家庭内ADLの自立には年齢や家屋改造が,就業就学状況には年齢,治療施設が影響する.これら社会的不利に対する初期治療法間の差は認めない.