抄録
失語症と痴呆の高次脳機能障害の特徴を明らかにすることを目的に,見当識,記憶,言語,視空間認知・構成の四つの側面を調べる高次脳機能検査(老研版)を失語症患者93例に実施した.軽~中等度の痴呆患者91例(笹沼ら,1987)との比較・検討を行ったところ,以下の知見が得られた.(1)失語症と痴呆との間に顕著な差異が認められた.ただし,差異のパターンは失語タイプによって異なった.(2)全般的には,失語症では痴呆に比べ,見当識,視空間認知・構成の各検査,および記憶面での情報保持の成績は高いのに対し,言語面の低下が目立った.