抄録
高齢障害者のADLに対する歯科治療効果を明らかにするために, 歯科評価, 歯科以外の介入情報, ADL, QOLを含む機能評価からなる調査表を作成し, 歯科治療前・後の状態を前方視的に比較検討した. 対象は歯科治療が必要な高齢障害者70名 (施設入所55名, 在宅15名) で, 治療前・後および治療終了6週後における各調査項目の中央値の差の検定を行った. 治療前・後の比較では, 歯科治療により, FIM選択合計点数 (中央値42, p<0.01)など多数項目にわたって改善が認められた. 歯科以外の介入と各調査項目の改善との間には相関がなかった(γ=-0.096). 歯科治療は, 口腔機能を改善し, それが食事機能の向上, 患者の活動性に影響を及ぼし, ADL, さらにQOLも改善したと考えられた.