はじめに:脳損傷者の自動車運転再開に必要な高次脳機能の基準値の妥当性を検証するために実態調査を施行した.方法:2008年11月~2011年11月までに東京都リハビリテーション病院に入院し運転を再開した脳損傷者を基準値群,2011年12月~2012年11月まで同院に入院し運転を再開した脳損傷者を検証群とした.検証群の高次脳機能検査結果より暫定基準値の妥当性を検討した.結果:基準値群は29名,検証群は13名であった.検証群のうち高次脳機能検査結果がすべて基準値内である脳損傷者は9名(69.2%)であった.暫定基準値を下回った高次脳機能検査項目は,1名はMMSEおよびTMT-A,1名はWMS-Rの視覚性再生および視覚性記憶範囲逆順序,2名はWMS-Rの図形の記憶であった.結論:机上検査結果は運転再開可否の目安となるが絶対的基準とは言えず,症例ごとに運転再開の安全性について検討すべきである.