The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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巻頭言
特集『完全頚髄損傷患者の職業復帰をめざすリハビリテーション治療』
  • 工藤 大輔, 宮腰 尚久
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1038-1043
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル 認証あり

    1990年代の新宮らの調査以来となる外傷性脊髄損傷の全国調査が実施された.2018年の脊髄損傷の推定発生率は100万人あたり49人,平均年齢66.5歳,受傷原因は平地転倒が最多(38.6%),機能障害はFrankel Dが最多(46.3%)であった.生産年齢(15~64歳)における完全頚髄損傷は,135名の登録があり,年齢中央値51歳で,全体の3.3%,完全頚髄損傷の34.0%を占めていた.生産年齢では,非生産年齢と比較し,交通事故(p=0.005),重量物落下・下敷き(p=0.008),スポーツ(p<0.001)による受傷が多く,非生産年齢では平地転倒(p<0.001)による受傷が多かった.

  • ―リハビリテーション科医の役割とは(総論)―
    古澤 一成, 難波 孝礼, 池田 篤志, 早田 美和, 尾崎 文, 冨田浩平 , 德弘 昭博
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1044-1050
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル 認証あり

    現在の医療制度からみて,脊髄損傷者が退院時に職業復帰に至るのは容易なことではない.全国脊髄損傷データベースの分析によると,頚髄損傷者は胸髄以下の損傷者に比べて退院時に職業復帰する割合は低く,特に第6頚髄レベルとそれより高位の頚髄損傷者では顕著である.本邦では,頚髄損傷が脊髄損傷の多くを占めており,その対応が求められる.

    情報技術の発展・普及による勤務形態の変化が頚髄損傷者にも新たな可能性を広げつつある.頚髄損傷者においては,在宅就労での職業復帰も模索することが賢明である.また,退院時に職業復帰に至らない場合は,その後も頚髄損傷者と医療従事者がともに「職業復帰」の目標を掲げ続けることが大切である.

  • ―褥瘡への対策―
    尾川 貴洋
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1051-1058
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル 認証あり

    完全頚髄損傷者の褥瘡についてはdeep tissue injuryという考え方が重要であり,活動性の低下,感覚障害,尿失禁や便失禁による湿気,筋萎縮や低栄養といった一般的な褥瘡リスクの他に,頚髄損傷者特有の褥瘡リスクがある.内分泌・免疫系の障害による創傷治癒遅延や,循環器系への影響による血圧低下や末梢微小循環血流低下などが挙げられる.予防として除圧は最も重要な1つであり,プッシュアップやTiltの影響で座面圧は変化することが示されている.特に難治性褥瘡のであれば,バイオフィルムの形成による影響を考え,しっかりとした処置が必要である.頚髄損傷者特有の褥瘡リスクである内分泌・免疫系の障害による創傷治癒遅延や,循環器系への影響に視点からも運動も奨められる.

  • ―排尿管理・排便管理―
    露木 拓将, 山上 大亮
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1059-1064
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル 認証あり

    頚髄損傷者の排泄障害は,社会参加や職場復帰の阻害因子となりやすい.排泄管理は職業準備性の土台となる健康・医療管理に位置しており,社会参加や職場復帰をめざす場合,自己理解と対処方法の習得が必須となる.排泄管理は,医学的リハビリテーション期で排泄方法の検討を行い,社会リハビリテーション期で自己管理と対処方法を習得し,職業リハビリテーション期で職場の環境に合わせた排泄管理を行う.排泄は当事者がいちばん悩む課題であり,排泄管理能力は,社会参加や就労時間に直結する生き方・働き方の最も大きな課題である.当院の経験を踏まえて記述していく.

  • 村田 知之
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1065-1072
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル 認証あり

    車いすの処方は,車いすの使用目的や当事者の要素だけでなく,人的環境や物理的環境,社会環境を考慮し,必要な機能や機構,付属品などを車いすの3機能(移動・姿勢・移乗)に着目して決定していく.そのうえで,完全頚髄損傷者が職場復帰をめざすためには,仕事内容や職場の環境,職場への動線なども物理環境の1つとして考慮し,適切な車いすを処方しなければならない.また,職場復帰がゴールではなく,就労を継続することも重要なポイントとなる.そのためには,当事者自身が車いす上での休息や除圧動作といった,体調管理ができるよう,車いすの処方を通じて指導することも求められる.

  • 渡邊 友恵, 田中 宏太佳
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1073-1078
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル 認証あり

    復職希望があり就労能力が残存する頚髄損傷者には,リハビリテーション治療と両立支援により復職し,労働者として活躍することを促したい.完全四肢麻痺例は原職復帰が難しいことが多く,会社側の復職条件や利用できる勤務制度を確認し,配置転換などの相談が必要となる.限られた休職期間内で復職するためには,早い時期から患者や家族と障害予後を共有し,会社側から提示される復職条件の達成に向け多職種協働で集中的,計画的にリハビリテーション治療を進めるとともに,頚髄損傷特有の健康管理方法や復職時の問題点の検討を行う.医療機関からも必要な情報提供や助言を行い,会社側の協力や配慮のもとに安全で有益な復職と長期雇用をめざしたい.

  • ―奈良県の回復期リハビリテーション病棟の立場から―
    登 希星, 重松 英樹, 平林 伸治, 川崎 佐智子, 池尻 正樹, 撫井 貴弘, 田中 康仁
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1079-1085
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル 認証あり

    地域の回復期リハビリテーション病棟は,完全頚髄損傷者の治療経験や,就労支援制度に触れる機会が乏しく,退院後に引き継ぐべき支援機関も地域間格差があると考えられる.今回奈良県の現状を明らかにするために,県内の回復期リハビリテーション病棟へのアンケート調査および県内外の支援機関に電話調査を行った.その結果,県内では完全頚髄損傷者が一般就労をめざすうえで整備された仕組みは確認できなかった.また,就労支援に関する地域・施設間格差が大きいことがわかった.しかし,県内でも重度脊髄損傷者に適した先進的なICTを用いた在宅就労訓練が始まっており,適切な就労支援提供のためには,医療者側も新しい情報収集を行っていく必要性を感じた.

  • ―患者の立場からみた職場復帰までおよび復帰後の経験と課題―
    小川 浩一
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1086-1091
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル 認証あり

    私は14年前に頚髄損傷(Frankel B,Zancolli分類C6 B)になり,受傷後約9カ月で就労復帰した.就労をめざすためには,肉体的生理的要因,精神的要因および環境的要因の克服が必要である.退院時までに朝から就寝までの車いす離床ができる体力の獲得をめざすことが最も重要であるが,就労を継続するためには質のよい睡眠やストレスのない排泄機能の獲得なども劣らず重要である.今回は「患者の立場からみた」職場復帰までのみならず復帰後を含めた経験と課題について,C6損傷を前提とした私見を述べた.

教育講座
原著
  • 木村 優斗, 村上 正和
    原稿種別: 原著
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1097-1104
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    [早期公開] 公開日: 2023/12/15
    ジャーナル 認証あり

    目的:本研究の目的は,決定木分析を用いて回復期リハビリテーション病棟における大腿骨近位部骨折患者の転帰先に必要な条件を明らかにし,在宅復帰のモデルを提示することである.

    対象:2018年1月~2022年6月に当院回復期リハビリテーション病棟から退院した患者181名とした.

    方法:転帰先によって自宅群と施設群に分類し,基本属性,入院時FIM,入院時MMSEについて対応のないt検定,χ2検定およびMann-Whitney U検定を用いて2群間で比較後,決定木分析を実施した.

    結果:決定木分析による解析の結果,入院時FIMの問題解決とトイレ動作からなる決定木が得られ,入院時FIMの問題解決が4点以下の場合には自宅退院が困難となる(自宅復帰率9.7~28.6%)などのルールが得られた.

    結語:大腿腿骨近位部骨折患者の在宅復帰を検討する場合は,入院時FIMの問題解決とトイレ動作を組み合わせて判断することが重要であることが示された.

症例報告
  • 菱田 愛加, 安藤 貴宏, 山口 英敏, 西脇 公俊, 西田 佳弘
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1105-1110
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    [早期公開] 公開日: 2023/12/15
    ジャーナル 認証あり

    We report a case of intractable complex regional pain syndrome (CRPS). The pain improved with regional anesthesia and physical therapy.

    A 24-year-old man with hemophilia A, developed throbbing pain from his left foot to the ankle, with no identifiable cause. No organic abnormalities were observed. He diagnosed with CRPS at the pain clinic and admitted to the hospital 10 months after symptom onset for physical therapy with regional anesthesia under clotting factor replacement therapy. Spinal anesthesia was administered on the first and second day of hospitalization, and plantar load stimulation and ankle stretching were performed in the operating room. Subsequently, sciatic nerve blocks and continuous epidural blocks were given, and plantar contact training, ankle joint ROM training, and parallel bar walking training were conducted with cognitive behavioral therapy. Sciatic nerve blocks were continued after discharge. Ninety-five days after onset, the patient was re-admitted for physical therapy, and ROM exercises, partial weight bearing, and gait training together with sciatic nerve blocks and cognitive-behavioral therapy. On discharge following re-admission, the pain improved. The patient walked using one crutch. One year later, the pain further improved, and the patient walked independently.

    The combination of regional anesthesia, physical therapy, and cognitive behavioral therapy created a virtuous cycle of pain relief, improved physical functions, and prevented withdrawal from catastrophizing, ultimately leading to overall improvement.

Secondary Publication
  • 内山 侑紀, 道免 和久, 小山 哲男
    2023 年 60 巻 12 号 p. 1111-1119
    発行日: 2023/12/18
    公開日: 2024/10/11
    ジャーナル 認証あり

    目的:脳出血患者の帰結予測における頭部CT画像の有用性を検討した.

    方法:発症直後に頭部CT撮影がなされた脳出血(被殻出血または視床出血)患者を対象とした後方視的解析を行った.CT画像を標準脳変換した後,皮質脊髄路に重なる病巣の体積を算出した.回復期リハビリテーション病院退院時のStroke Impairment Assessment Set運動項目合計(SIAS-motor合計,0~25点),Functional Independence Measure運動項目合計(FIM-motor合計,13~91点),総入院日数を帰結指標とした.Spearmanの順位相関検定を用いて,皮質脊髄路と病巣の重なりの体積と帰結の相関を評価した.

    結果:対象患者30人で解析を行った.皮質脊髄路と病巣の重なりの体積は0.002~4.302 mL(中央値1.478 mL)であった.SIAS-motor合計は0~25点(中央値20点),FIM-motor合計は15~91点(中央値80.5点),総入院日数は31~194日(中央値106.5日)であった.皮質脊髄路と病巣の重なりの体積と帰結の相関はすべて統計学的に有意であった(P<0.01).それらの相関はSIAS-motor合計(R=-0.710)で最も強く,次いでFIM-motor合計(R=-0.604),総入院日数(R=0.493)の順であった.

    考察:CT画像を用いた皮質脊髄路の病巣の体積測定は脳出血患者の帰結予測に有用であることが示唆された.

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