The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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巻頭言
特集『脊髄性筋萎縮症に対するリハビリテーション治療』
  • 佐藤 孝俊, 石垣 景子
    2026 年63 巻3 号 p. 210-214
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/05/18
    ジャーナル 認証あり

    脊髄性筋萎縮症(SMA)は,SMN1遺伝子の欠失により,SMNタンパクが産生されないことにより,脊髄前角細胞が変性・消失し,進行性の筋萎縮と筋力低下を呈する常染色体潜性遺伝疾患である.SMN1遺伝子近傍のSMN2遺伝子もわずかにSMNタンパクを産生しているため,その残存コピー数が重症度に相関する.近年,その診療は大きく変化した.髄注核酸医薬品,経口低分子化合物,アデノ随伴ウイルスベクターを用いた遺伝子治療薬が相次いで承認され,いずれも運動・呼吸機能の改善を示している.今後は新生児スクリーニングの普及とともに,早期治療が標準化されると予想される.本稿では,SMAの病態生理を述べ,治療薬の作用機序を説明する.

  • 原 貴敏
    2026 年63 巻3 号 p. 215-221
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/05/18
    ジャーナル 認証あり

    脊髄性筋萎縮症(SMA)のリハビリテーション治療は,予防のみならず機能向上の観点から神経筋疾患の治療・リハビリテーション治療として注目が集まっている.その基盤として,SMAにおいては,いくつかの疾患特異的な評価があり,評価の臨床的に有意な変化について,過去にいくつかの研究が報告されている.SMAの機能評価については,その意味づけ,理由付けが少しずつ進んでおり,治験に限らず,普段の臨床分野でも運動機能評価を実施すること,加えて,さらなるエビデンスの構築が重要であると考える.

  • 原田 理沙
    2026 年63 巻3 号 p. 222-227
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/05/18
    ジャーナル 認証あり

    脊髄性筋萎縮症(SMA)は,疾患修飾薬の導入によりその自然歴が劇的に変化し,リハビリテーション治療の役割は代償から機能促進へと移行しつつある.本稿は,この新時代におけるSMAリハビリテーション診療のエビデンスを総括する.早期治療による運動機能の劇的な獲得が示される一方で,座位獲得後の早期進行性脊柱側弯症等の新たな合併症が顕在化している.リハビリテーション治療においては,薬物療法との併用効果を最大限に高める促進的な理学療法,適切な補装具を使用した運動指導や姿勢保持が必須となる.しかし,専門知識を有する高次医療機関と地域との連携の難しさは継続的な質の担保を阻む構造的課題である.今後は,SMAリハビリテーション診療へのリハビリテーション科医のより積極的な参画,ロボットや仮想現実などの新規技術の活用と,多施設連携によるエビデンス構築が,SMA患者の活動を育むために必要とされている.

  • 長谷川 三希子, 上條 義一郎
    2026 年63 巻3 号 p. 228-234
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/05/18
    ジャーナル 認証あり

    脊髄性筋萎縮症(SMA)は疾患修飾治療(DMT)の導入により自然歴が大きく変化し,特に発症前または直後の早期治療では運動獲得が示されている.一方,近位筋優位の筋力低下に加え側弯などの合併症は依然として残存し,長期的予後を踏まえた理学療法が重要である.そのためにも本稿では,当院で経時的運動機能評価を行ったSMA患児19例を5群に分類し,治療開始時期や重症度による特徴的な経過を示した.発症後早期治療群は良好な発達を示す一方,治療開始が遅い群では改善が限定的であった.理学療法では,代償動作の最小化,姿勢管理,家庭環境を含む活動量確保が重要である.DMT時代に適応した理学療法の方向性を解説する.

  • 高橋 香代子
    2026 年63 巻3 号 p. 235-241
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/05/18
    ジャーナル 認証あり

    脊髄性筋萎縮症(SMA)は進行性疾患であるが,適切な治療・支援により子どもの発達可能性は高く,作業療法は成長に応じた作業参加を支える重要な役割を担う.評価ではCHOP INTEND,HFMSE,RULM,PEDI,COPMなど標準化された尺度を用い,身体機能だけでなく生活実態や本人のニーズを把握することが重要である.リハビリテーション治療は「人・環境・作業」の視点から,関節可動域維持,装具療法,自助具・ICT支援,環境調整,家族支援を包括的に行う.SMA児に対する早期かつ将来を見据えた作業療法では,装具やスイッチ操作の導入などを通して,SMA児の発達や生活の質向上と主体性の確立を目指している.

  • 中山 慧悟
    2026 年63 巻3 号 p. 242-249
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/05/18
    ジャーナル 認証あり

    脊髄性筋萎縮症(SMA)は疾患修飾療法の普及により生命予後と運動機能が改善したことで,従来は期待できなかった発達や活動が可能となった.一方で,注意・実行機能の低下,嚥下機能低下や食塊形成困難,咀嚼時の疲労といった「認知・言語発達機能」「発声発語機能」「摂食嚥下機能」「咀嚼・口腔機能」といった非運動領域の問題が新たな課題となっている.本稿ではこれらの側面についてSMAのタイプごとに特徴や問題点を整理し,機能障害の全体像を把握するとともに,必要とされる多面的な評価と包括的な治療の基本的な考え方を提示する.

  • 石川 悠加
    2026 年63 巻3 号 p. 250-257
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/05/18
    ジャーナル 認証あり

    脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)においては,呼吸機能評価に基づく肺リクルートメントにより,肺のコンプライアンスを維持し,肺の成長発達を促す.適応により,非侵襲的な気道クリアランスと換気補助を導入し,急性や慢性呼吸不全により生命や生活の質(QOL)に影響を及ぼすことを最小にする.周術期に要した気管挿管は,非侵襲的呼吸マネジメントにより抜管する.近年,分子遺伝学的機序に基づく疾患修飾薬により運動機能や生命予後が著明に改善しているが,呼吸に対する効果は限定的な可能性が示唆されている.今後,新生児スクリーニングが進み,早期治療による新たな病型がより増えることが考えられ,呼吸リハビリテーション治療の効果を検討する必要がある.

  • 花井 亜紀子
    2026 年63 巻3 号 p. 258-264
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/05/18
    ジャーナル 認証あり

    脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療は進歩しており,患者を取り巻く状況は変わりつつある.我々の支援やケアは,患者・家族の生活や人生に影響するため,適切にアプローチする必要がある.診断後は家族の心理的支援と,在宅療養に向けた医療・リハビリテーション治療・福祉の連携が不可欠である.運動機能低下や医療的ケアに対応する訪問看護,在宅でのリハビリテーション治療,適切な福祉用具の導入,就園・就学・就労支援など多方面の調整が必要となる.また,医療費助成(小児慢性特定疾病・指定難病等),各種手当,障害福祉サービス,補装具給付など多くの制度が活用可能であり,ソーシャルワーカーや相談支援専門員と連携しながら適切に利用することが重要である.

教育講座
原著
  • 秋葉 周, 片倉 哲也, 沓間 千夏, 天野 めい, 水谷 純子
    2026 年63 巻3 号 p. 288-298
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/05/18
    [早期公開] 公開日: 2026/02/18
    ジャーナル 認証あり

    目的:本研究の目的は大腿骨近位部骨折の術後患者を対象に術直後から得られる指標を用いて早期歩行獲得を予測するモデルを開発することである.

    方法:対象の取り込み基準は2022年4月〜2024年4月の間に受傷し,手術が施行された患者であること,受傷前に介助なしで10 m以上歩けていたことが確認できた患者とした.除外基準は死亡退院または術後荷重制限が課せられた患者とした.目的変数は,術後2週時点で介助なしで10 m歩行が可能か否かとした.特徴量には,body mass index(BMI),abbreviated mental test score(AMTS),American Society of Anesthesiologists physical status,受傷前の歩行補助具の使用状況,術中出血量,手術法などを採用し,勾配ブースティング決定木を使用して予測モデルを開発した.

    結果:対象は122例となった.術後2週時点での介助なしでの10 m歩行の可否と関連の強い特徴量としてAMTS,髄内釘使用の有無,BMIといった因子が挙がった.これらの特徴量を含む予測モデルで未学習のテストデータを予測した結果,再現率72.7%,適合率66.6%となり,ROC曲線のAUCは0.80となった.

    結論:本研究は術直後の指標を用いて早期の歩行獲得を予測する機械学習モデルの開発が可能であることを示した.先行研究では術後2週時点での歩行能力は長期的な歩行能力の回復や転帰先に関連する因子とされている.術直後から予測を行うことはリハビリテーション治療のプログラムや退院計画の策定に役立つと期待できる.

  • 望月 亮, 豊田 貴信, 神谷 康貴, 鈴木 琢弥, 服部 勇輝, 菅尾 美沙, 吉本 好延
    2026 年63 巻3 号 p. 299-311
    発行日: 2026/03/18
    公開日: 2026/05/18
    [早期公開] 公開日: 2026/02/18
    ジャーナル 認証あり

    目的:回復期リハビリテーション後期にも歩行レベルの改善を認める症例の特徴を明らかにし,予測可能とすることを目的とした.

    方法:回復期リハビリテーション病棟に入棟した192例(脳疾患,整形疾患)を対象とし,経時的にWalking LEVEL Scale(WaLS)を測定した.そして,後期にWaLSの改善を認める「delayed recovery群」(DR)と改善を認めない「non-delayed recovery群」(NDR)の2群の違いを特定するためにWaLSの経時的変化の比較や,各要因とWaLSスコアを用いたロジスティック回帰分析を行った.また,receiver operating characteristic曲線を用いて関連要因のカットオフ値,感度,特異度,尤度比を算出し,ベイズ推定によるDRの予測可能性について検討した.

    結果:DRは脳疾患で22.1%,整形疾患で60.4%存在した.WaLSの経時的変化は,脳疾患DRではシグモイドカーブを示し,その他は対数曲線様のカーブを示した.ロジスティック回帰分析では脳疾患,整形疾患ともに入棟時WaLSスコアが有意な変数として選択され,同スコアのカットオフ値4以下でのDRに対する感度,特異度,陽性尤度比,陰性尤度比はそれぞれ,脳疾患で0.90,0.55,2.00,0.19,整形疾患で0.64,0.57,1.49,0.63であった.本研究におけるアウトカム頻度(DR割合)を事前確率とし,陰性尤度比を用いると,脳疾患DR事後確率は約5%と算出された.

    結論:回復期リハビリテーション後期にも歩行レベルの改善を認めるDRの予測には,脳疾患では入棟時WaLSスコアの陰性尤度比を用いたベイズ推定が有用である.

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