運動療法の可能性を探るため,その対象疾患拡大の変遷と主な疾患・障害に対する運動療法の効果について述べた.運動器疾患に対しては筋力強化訓練,関節可動域訓練,有酸素運動が有効である.糖尿病・肥満症に対する有酸素運動ではインスリン感受性が高まることによる効果が大きい.循環器疾患・呼吸器疾患では有酸素運動単独より,筋力強化訓練の併用において効果が大きい.精神疾患・認知症・慢性疼痛では運動療法が脳に好影響を与えることが検証されている.近年運動療法の対象が拡大したのは,運動療法が身体に与える影響のみではなく,中枢神経系に対する有益な効果が証明されたことに起因するものと思われる.