2019 年 56 巻 4 号 p. 317-321
目的:本研究の目的は,治療の組み合わせが身体外の無視(extrapersonal neglect:EP)に対して有効か否かを明らかにすることである.
方法:対象は,右半球損傷によって左半側空間無視(unilateral spatial neglect)を呈した症例1名であり,杖や装具を用いなくても歩行可能な者とした.研究デザインはBAB'型single subject designを用い,各期は週7回2週間とした.A期では歩行中に通常の視覚探索課題を行った.B期では歩行中の通常の視覚探索課題の際に左頚部筋に経皮的末梢神経電気刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation)を併用して実施し,課題終了直後はsmartphoneを用いてvideo feedbackを行った.主なアウトカムはBehavioral Inattention Test(BIT)とCatherine Bergego Scale(CBS)を用いた.
結果:B期でBITとCBSが改善した.特に,歩行中のCBSの下位項目である「左側への衝突」と「左側へ曲がることの困難」の観察評価と病態失認の得点に改善を認めた.
結論:治療の組み合わせはEPと気づきに対して有効であることが示唆された.