過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)の主要な病態生理として内臓知覚異常,消化管運動機能異常ならびに心理社会的異常が知られている.さらに,中枢と末梢(腸)における機能的な相互関連の変化,すなわち脳腸相関の異常がIBS病態の中心的な役割を果たしている.疼痛に関連する脳内ネットワークはペインマトリックスと呼ばれている.脳機能画像研究によって内臓感覚に関する情動・覚醒系に関連する脳領域の刺激反応亢進性がIBS患者において認められることが明らかになった.このような内臓知覚異常に対する機能回復を目的とした特異的な治療法は十分確立されていないが,薬物療法のみならず,さまざまなモダリティによってさらなる検討が進められている.