2021 年 58 巻 5 号 p. 578-584
目的:下肢切断後の転帰に関する大規模研究は少ない.また,下肢切断後の重要な転帰として再切断が挙げられるが,再切断に関するリスク因子は明らかになっていない.下肢切断後の在院死亡および再切断に関するリスク因子を明らかにするため本研究を行った.
方法:本邦における入院患者データベースを用いて,下肢切断術を受けた患者13,774人の情報を抽出した.患者背景を分析し,多変量ロジスティック解析を用いて在院死亡および再切断に関連するリスク因子の解析を行った.
結果:対象患者の平均年齢は72.4歳であり,63.1%(n=8,694)が男性であった.在院死亡率は10.8%(1,481/13,774人)であった.足部切断または下腿切断後の再手術率は10.1%(782/7,779人)であった(足部切断後では18.2%〔391/2,148人〕,下腿切断後では6.9%〔391/5,631人〕).再手術または在院死亡の有意なリスク因子は,高年齢,男性,末梢循環疾患,入院中のインスリンの使用,入院中の血液透析の実施,および多い併存疾患数であった.入院中の血液透析の実施が最も強いリスク因子であった(オッズ比:2.10,95%信頼区間:1.87~2.35).
結論:下肢切断後の在院死亡率と再切断率は高く,下肢切断術を受けた患者がもつ慢性疾患の状態を反映しているものと考えられた.本研究にて明らかになった下肢切断後の在院死亡および再手術のリスク因子は,術後の予後の予測や切断高位の決定に寄与するものと考えられる.