抄録
131例の肺癌手術例を対象として組織CEAの染色を行ない組織型別, 分化度別の比較を行なった. 染色法は酵素抗体法(PAP法)を利用し一部に最近注目されているABC法を併用した. 組織型別では腺癌においてCEA染色度が強く, 特に高分化型ではその傾向は顕著であった. 扁平上皮癌でも陽性所見が得られたが腺癌に比すると弱く, 角化部, 壊死傾向の強い部分を中心として染色された. 全例において術前に血漿CEA, また一部症例に術中肺癌組織からの組織CEAの定量を行ない上記CEA染色との対比を行なったが, 血漿CEA, 組織CEAの値の高いものではCEA染色性も強く出現した. しかし血漿CEAと染色度が必ずしも平行しない症例もありこの事は癌が脈管内に侵入していない場合の現象と推察された.