1985 年 23 巻 10 号 p. 1189-1193
右上葉の部分気胸の脱気療法後に, 右上葉に限局して発生した再膨脹性肺水腫の1例を報告した. 症例は74歳, 男性. 約2ヵ月前にも右肺の完全気胸を起こし, ただちに低圧持続吸引療法を行ない治癒している. 今回は部分気胸であり, 虚脱率も小さかったため3日間安静にて経過観察した後, 低圧持続吸引療法を行った. 本例の再膨脹性肺水腫の発生機序を考えるうえでこの点が重要と考えられる. 3日間の虚脱期間のあいだに, hypoxia による血管内皮細胞の障害, 血管作動性物質の異常産生があり, 急激な血流再開により再膨脹性肺水腫が惹起されたものと推測された.