呼吸中枢からの吸気活動と呼吸パターンを決定する基本因子であるV
T, T
I, T
Eとの関係をプログラムMAP (Multi Analysis Program) を用いて解析した. このMAPはBASIC言語で約370ステップで書かれており, 11種類の組み合わせについて一次あるいは曲線回帰式を70~100秒で演算処理し, 結果をCRT画面上に描出することが出来る. 健康な男女合計20名を被験者とした. 高二酸化炭素換気応答は1.92±1.13L/mmHg, P
0.1は0.57±0.43cmH
2O/mmHgであった. これらのデータはすでにいくつか報告されている測定値と同様に正常範囲にあると考えられた. 高二酸化炭素刺激に対する1回換気量V
Tの増加と吸気時間T
I, 呼出時間T
Eを平面に描出する diagram 上基本的に3つの型に大別することが出来た. 4例では換気量増大時にV
Tのみ増加しT
I, T
Eともほとんど変化しない (A型), 6例ではT
Iはほとんど変化しないがT
Eの短縮が著しく, 呼吸数の増加原因となっている (B型). 10例ではV
Tの増加とT
I, T
Eの短縮による呼吸数増加が換気量を増大させていた (C型). 全ての型でP
0.1は平均吸気速度V
T/T
Iと直線的に良く相関していた. C型の10例ではP
0.1と1/T
1の関係は一次回帰式で良好な相関関係を示した. これらの3つの呼吸パターンは今回の研究での対象者の範囲では体格, 呼吸換気力学の測定値と関連性はみられなかった. 呼吸のタイミング因子であるT
I/T
TOTはB型でのみ有意に変化した. 換気量が増大する時1回換気量は最大1秒量の50%まで増加した. その後は主に吸気時間が短縮して平均吸気速度V
T/T
Iを増加させた. この結果P
0.1は終始V
T/T
Iと直線的関係を保つことになった. V
TがFEV
1.0の50%になる以前に effective compliance を計算すると184.0±78.9ml/cmH
2Oであった. また effective impedance は7.24±3.02cmH
2O/L/secであった. ここに挙げた新しい呼吸パターンの分類方法は呼吸調節の研究に重要な役割を演ずると考えられた.
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