抄録
我々はすでに, 生体の血流波形に近似した脈動流を得ることのできるイヌ摘出肺葉灌流系を用いて, 肺血管床における各種血管作動物質の主作用部位を決定できることを報告した. 今回, これらの成績を肺血管入力インピーダンスパターンの変化という面からも確認しようと試みた. 本灌流系にセロトニン (5HT), ノルアドレナリン (NA), プロスタグランディンF2α (PGF2α), ヒスタミン (Hist) を投与すると, インピーダンスパターンの変化は5HTとNAでは順行灌流で, PGF2αとHistでは逆行灌流でより著明であった. モデル実験では, このパターンの変化は主抵抗より近位側のコンプライアンス低下により出現することを確認した. すなわち, 本灌流系における肺葉流入圧上昇に伴う流量波の振幅変化の検討により, 肺血管床における薬物の主作用部位を決定しうることを, 肺血管入力インピーダンスの解析によっても裏付けることができた.