抄録
ウサギ42羽に細切した新鮮自己人工血栓を2週間に1回合計4回静注し, 最終注入の1週から3ヵ月後まで再発性肺血栓塞栓症の肺病変を観察した. 血栓最終注入から1~2週後は, 血栓塞栓性肺動脈炎と血栓が存在しない小動脈内膜の血管炎に続く全周性線維性肥厚により, 内腔狭窄が認められた. 1ヵ月後小動脈壁の炎症性変化は消退するが, 内膜の全周性線維性肥厚は増強して血管腔はほとんど閉塞し, 外膜寄りの中膜平滑筋細胞に excrescence が認められた. しかし3ヵ月後小動脈の壁肥厚はみられるが, 内腔狭窄は減退した. また肺動脈平均血圧は1週および1ヵ月後は漸次上昇したが, 3ヵ月後はほぼ対照値に戻るので, 再発性肺血栓塞栓症における肺高血圧症は可逆的なものと思われる. また肺高血圧発生病理の主役は血栓塞栓性肺動脈炎ではなく, 血栓が存在しない部の小動脈内膜炎に続く全周性肥厚に基づく内腔狭窄であると示唆される.