日本胸部疾患学会雑誌
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慢性気道感染症患者のBALFに見られるエラスターゼ活性とその臨床的意義
山田 穂積黒木 茂高加藤 収山口 常子日浦 研哉鐘ケ江 秀明
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1988 年 26 巻 3 号 p. 260-266

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抄録
エラスターゼは肺組織傷害を惹起する proteinase として知られている. 我々は, 慢性気道感染を合併したびまん性汎細気管支炎8名, 慢性気管支炎2名および気管支拡張症2名にBALを施行し, BALFのエラスターゼ活性を SAPNA hydrolysis と elastolysis で測定した. SAPNA hydrolytic activity は12名中10名に検出され, elastolytic activity は9名に認められた. なお, 対照の nonsmoker 群8名, smoker 群10名および fibrosis 群10名のBALFには, エラスターゼ活性は検出されなかった. BALFエラスターゼ活性は, DFPで阻止され, EDTAで抑制されず, 好中球由来のセリンプロテアーゼと考えられた. また, 緑膿菌感染患者6名は, BALFエラスターゼ活性が著しく高値であり, 予後不良であった. 一方, 慢性気道感染患者BALFのα1-ATは, nonsmoker 群に比較して約8倍の高値であったが, BALFそのものは elastolytic activity を示し, BALF中のα1-ATの阻害能を超えるエラスターゼの存在が示唆された.
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