日本胸部疾患学会雑誌
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各種モノクロタリン投与量によるラット肺高血圧の成立とその消退に関する研究
角坂 育英金子 昇喜屋武 邦雄藤田 明鈴木 淳夫中野 邦夫岡田 修椙田 隆栗山 喬之渡辺 昌平
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1989 年 27 巻 1 号 p. 51-56

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抄録

Monocrotaline (Mct) 肺高血圧症におけるMctの投与量を調節し, 生存率に及ぼす影響と肺高血圧性病変の可逆性について検討した. 4週齢, 雄, SD系ラット100匹を用い, 一群では生存率に及ぼす影響を, 他群は一定期間毎の血行動態的, 組織学的変化を見るために共にMct投与後9週目まで観察した. この二群はさらにMct投与量により, 10mg/kg, 20mg/kg, 30mg/kg, 40mg/kg投与および無処置対照の5群に分けた. 結果はMct 30mg/kg, 40mg/kg投与群は肺高血圧, 肺性心のため, その殆どが5週間以内に死亡した. 10mg/kg投与群では観察期間中肺高血圧, 右室肥大の発生は見られなかった. 20mg/kg群では30mg/kg, 40mg/kg投与群と同程度の肺高血圧, 右室肥大の発生が3週目に認められたが, 経過と共にそれらは明らかに減少し, 9週目には肺小血管の壁肥厚は認めるものの, 右室収縮期圧, 右室肥大の程度は対照群と有意の差を示さなかった. これらより, Mct 20mg/kg一回投与ラット肺高血圧症の発症には明らかに血管作動性物質, 微小血栓などの一過性, 可逆性の因子の存在が示され, この実験モデルは肺高血圧進展機序の解明に適する病態モデルと考えられた.

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