日本胸部疾患学会雑誌
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高熱, 好酸球増多症を伴い, 広汎なスリガラス様陰影を呈して発症したサルコイドーシスの1例
中野 義隆栗原 直嗣宮本 修高松 健次足立 規子藤原 寛田中 勲
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1989 年 27 巻 1 号 p. 98-106

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抄録

症例は62歳, 女性で労作時呼吸困難を主訴に入院した. 38~39℃の発熱があり, 末梢血好酸球増多 (14%, 980/mm3) を認めた. 胸部X線像は両側広汎なスリガラス様陰影が主体であり, 一部に air bronchogram を伴っていた. さらにその陰影は“移動性陰影”とも言える変化を示した. 経気管支肺生検 (以下TBLB) の結果, 強い胞隔炎を伴う非乾酪類上皮肉芽腫形成を認め, また肺胞腔内には滲出性変化を示す部分も存在していた. そして気管支肺胞洗浄液 (以下BALF) では, リンパ球が28%と増加していた. ステロイド投与をおこなった結果, 症状や胸部X線像は急速に改善したが, 治療を中止してから約1ヵ月後に両側下肢に皮膚病変が出現し, 皮膚生検でTBLBと同様の非乾酪類上皮肉芽腫を認めたためサルコイドーシス (以下サ症) と確定診断した. 皮膚病変の出現から約1ヵ月後, 再び前記の症状が出現するとともに胸部X線像も増悪したが, この時もステロイド治療により著明な改善が得られた. なおこの増悪時のBALFでは好酸球が24.9%と著しく増えていた. 本症例はその胸部X線所見, 皮膚病変の出現を含めた臨床経過, さらに気腔内への滲出性変化を伴う強い胞隔炎の存在などの点で興味ある特異なサ症と思われた.

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