抄録
48歳, 女性. 43歳の頃より発熱, 乾性咳を反復していた. 45歳時近医で肺野異常陰影を指摘されたが放置, 同様の症状が続くため48歳時当科入院した. 胸部X線上, 右下肺野に半球状の腫瘤影を認めた. 胸部CTでは, 均等な高濃度域を持つ腫瘤像が下肺野S8を中心に存在していた. Gaシンチグラムは腫瘤像に一致した取り込みの増加を, また肺換気, 血液シンチグラムは同部の欠損像を示した. 喀痰検査, 気管支肺胞洗浄液に悪性細胞, 結核菌, 一般細菌を認めず, 肺良性腫瘍を疑い右下葉切除を施行した. 腫瘤は, 病理組織学的にいわゆる pseudolymphoma と診断されたが良性, 悪性の判断が非常に困難な組織像を呈していた. また手術前後での血清補体価および末梢血リンパ球 subpopulation の変化を認めた. 本症例を通していわゆる肺 pseudolymphoma の診断, 病因, 病態について考察を加えた.