日本胸部疾患学会雑誌
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気管支肺胞洗浄液中に好中球増加を認めたARDS移行期患者の1例
谷口 博之近藤 康博松本 浩平馬嶋 邦通横山 繁樹滝 文男山木 健市鈴木 隆二郎高木 健三佐竹 辰夫
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1989 年 27 巻 8 号 p. 974-979

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抄録
症例は16歳, 妊娠28週の女性. 自動車事故による多発骨折のため入院. 入院後, 貧血が認められたため大量の輸血を受け, 胎児切迫流早産予防のため塩酸リトドリンの投与が行われていた. 第4病日に咳嗽, 血痰がみられ, 第5病日には胸部X線上両側びまん性陰影が出現し, PaO2 41.0Torrと急性呼吸不全に陥った. 本症例の肺動脈楔入圧は正常範囲内で, 同時期に施行した気管支肺胞洗浄 (BAL) 液中の好中球分画は40.0%と増加を示した. またBAL液中には強い好中球遊走因子活性を持つとされるロイコトリエンB4の存在が認められた. 以上の結果よりARDSへの移行段階にある透過性亢進型肺水腫と診断, methylpredonisolone によるパルス療法を施行したところ, 呼吸不全の軽快をみた. 今後ARDSの早期診断, およびステロイドの使用時期の検討においてBALは有力な情報を提供すると考えられる.
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