日本胸部疾患学会雑誌
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浸潤型悪性上前縦隔腫瘍の外科療法に関する検討 -特に上大静脈切除・血行再建の意義について-
藤沢 武彦山口 豊馬場 雅行柴 光年山川 久美木村 秀樹小川 利隆門山 周文由佐 俊和岩井 直路斉藤 幸雄卜部 憲和
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1990 年 28 巻 4 号 p. 612-616

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抄録
浸潤型悪性上前縦隔腫瘍48例の外科治療成績を上大静脈合併切除・血行再建の有無, 浸潤隣接臓器数等より検討した. 組織型の内訳は浸潤型胸腺腫36, 胸腺癌および胸腺カルチノイドそれぞれ3, 悪性胚細胞腫およびリンパ腫それぞれ2, 胸腔内甲状腺癌および悪性黒色腫それぞれ1であり, 48例のうち22例は胸膜または腫瘍被膜への浸潤のみであったが, 26例では隣接臓器への浸潤がみられ, その臓器としては肺, 心膜, 大静脈, 横隔神経が大多数であった. 1または2臓器浸潤例は16例, 3から6臓器への浸潤は10例であった. 上大静脈・腕頭静脈への浸潤が認められたものは12例で, 最近7年間の9例に対して expanded polytetrafluoroethylene graft を用いて上大静脈の血行再建術を行い, リング付きのものでは開存性は良好で術前上大静脈症候群を合併した症例を含め術後全例に顔面浮腫等の上大静脈症候群は出現せず, 最長40ヵ月の開存例を得ている. 血行再建例とその他の隣接臓器合併切除例の生存率の比較では両者に明らかな差は認められず, 血行再建例のうち完全切除の施行出来たものの生存率は不完全切除に終ったものより明らかに良好であった. 浸潤隣接臓器数で成績を比較すると1または2臓器浸潤例の生存率は3から6臓器浸潤例のそれより推計学的に有意に良好であった (p<0.05, Cox-Mantel test). 浸潤型悪性上前縦隔腫蕩に対する外科療法のなかで, 上大静脈切除・血行再建は症状の改善, 手術根治度の向上および生存期間の延長のために有効な外科手術法であると考える.
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© 日本呼吸器学会
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