日本胸部疾患学会雑誌
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肺血栓塞栓症を呈し Lupus anticoagulant を認めた1症例
青木 茂行三重野 龍彦倉富 雄四郎北村 諭梶井 栄治隅谷 護人
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1990 年 28 巻 4 号 p. 617-622

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抄録
22歳男性の症例で約4ヵ月間に3回の胸痛, 呼吸困難発作があり, 血痰および徐々に進行する呼吸困難を訴えて受診した. 胸部X線上は左下葉の肺梗塞の所見を呈し, 肺血流・換気シンチ, 肺動脈造影にて肺血栓塞栓症と診断した. 血栓溶解療法を施行したが著明な改善は得られず, 抗凝固療法を継続している. 明らかな深部静脈血栓は認められなかった. 自己抗体の検索から, Lupus anticoagulant の存在および自己免疫性溶血性貧血の合併を認めた. Lupus anticoagulant はリン脂質に対する抗体であり, 血管内皮細胞におけるプロスタノイドの産生低下, 血栓形成が示唆されている. 本例において末血中の6-keto-PGFが低値を示したことから, 本症発症機序の1つとして, Lupus anticoagulant による血管壁でのPGI2の産生障害に伴う血栓形成が示唆された.
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© 日本呼吸器学会
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