日本胸部疾患学会雑誌
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高熱, 肺血栓塞栓症にて発症し, 心内膜病変を合併した原発性抗リン脂質抗体症候群の1例
樫山 鉄矢猪熊 茂子溝尾 朗今橋 正令安田 順一藤田 明渡辺 明鈴木 光木村 仁
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1992 年 30 巻 1 号 p. 106-111

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抄録
症例は16歳の女性. 血痰, 高熱, 胸部苦悶感, 呼吸困難で発症した. 皮膚, 関節に所見なし. 心雑音あり. 白血球増多, 貧血, 血小板減少, 炎症反応の増強, 部分トロンボプラスチン時間の延長, 低酸素血症などを認めた. 抗核抗体は陰性であった. 胸部X線写真では左胸水及び左下肺の浸潤影を認め, 心臓超音波検査では僧帽弁に接して mass を認め, 僧帽弁逆流を伴っていた. 抗生剤の投与を行うも高熱が続き, また左下肢の腫脹も出現したため, ヘパリンと共に, ステロイド大量の投与を開始したところ解熱し, その他の所見も改善に向かった. 左下肢静脈造影では, 深部静脈の血流欠損を, 肺血流シンチグラムでは多発性の欠損を認めたため, 深部静脈血栓症, 肺血栓塞栓症と診断した. 抗カルジオリピン抗体価が高値を示したため, 原発性抗リン脂質抗体症候群と考え, 抗凝固療法, ステロイド漸減投与を続けたところ抗体価も減少し, 現在外来観察中である.
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