日本胸部疾患学会雑誌
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難治性の血痰で発症し診断が困難であった悪性血管内皮腫の1例
佐々木 康人河野 修坂田 哲宣松本 充博興梠 博次杉本 峯晴安藤 正幸荒木 淑郎東 賢次高橋 潔
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1992 年 30 巻 1 号 p. 123-127

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抄録
症例は65歳, 男性. 昭和63年5月, 血痰を認め近医受診. 症状の増悪と胸部X線像にて右上下肺野に淡い斑状影を認めたため精査目的にて6月25日当科入院となった. 入院後, 結核を含めた感染症, 悪性腫瘍, 凝固系異常, 結合織疾患による肺内出血などを疑い検索を進めたが, 確定診断は得られなかった. また, 他臓器にも異常を認めなかった. その後, 血痰と呼吸困難が増悪したため, 抗生物質の投与, 止血および抗凝固療法, ステロイド・パルス療法, 血漿交換療法などを施行した. しかし, 改善は認められず7月29日呼吸不全にて死亡した. 剖検では, 病理組織学的に肺血管より乳頭状に増殖する腫瘍細胞を認め, また鍍銀染色で, 血管壁に鍍銀線維が輪状に発達し, その内側に腫瘍細胞が配列している像が認められた. 更にこの腫瘍細胞が第VIII因子関連抗原にて染色されたことより悪性血管内皮腫と診断した. 本症はまれではあるが, 診断には困難を伴うことも多く, 難治性の血痰, 喀血をきたす原因疾患として注意が必要である.
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